実践 小児てんかんの薬物治療 改訂第2版

  • ページ数 : 220頁
  • 書籍発行日 : 2025年10月
  • 電子版発売日 : 2025年9月23日
¥5,500(税込)
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商品情報

内容

てんかん専門医として長年治療に携わる著者の豊富な経験に基づき,小児てんかんの薬物治療について丁寧に詳説した実践書が待望の改訂.
ポイントを見やすくまとめたチャートや表,実際の治療手順を実感できる症例掲載はそのままに,2022年のILAEてんかん分類に沿った解説や新薬の追加等により,さらに実践的に!また,治療のみでなく,学校への対応や公費負担制度等,小児てんかん患者の生活を支援する内容も解説した充実の1冊.

序文

改訂第2版 序文

てんかん治療に関してたくさんの経験をさせていただき,こんな本があったらいいな,という趣旨で初版を発刊したが,多くの方に受け入れていただいたことは望外の喜びである.しかし,初版というのはどうしても不備が目につく.そこで,もっと具体的でてんかん治療を行いやすくすること,もっと正確なデータに基づくようにすること,この5年間の進歩を取り入れることを目指して改訂版を作成した.

主な改訂点は以下のとおりである.

①国際抗てんかん連盟(ILAE)のてんかん症候群分類の変更(2022年)にあわせててんかん症候群名の新旧対照表を作成し,各症候群をILAE の分類に沿って解説した.

②新薬(フィンフィルラミン,ブリーバラセタム)を追加し,また保険適応の変化と選定療養費を要する長期収載薬品を明示した.

③ precision medicine に新たな知見を追加した.

④発作の好発時間に血中濃度を高くするために,ピーク時間,半減期,眠気の有無の組み合わせによる好発時間に対する薬剤選択表を作成し,3 つの代表的な発作症状(強直・強直間代,欠神・焦点性意識減損,間代・ミオクロニー発作)の具体例を提示した.

⑤ピーク時間,半減期は添付文書では大部分は健康成人の空腹時の単回投与の値が記載されているが,てんかんの薬は実際には食後の反復投与がほとんどであり,実情に合わない.そこで,各薬剤のインタビューフォームを元に薬物動態を極力,食後投与,反復投与,日本人のデータとした.ピーク時間は空腹時投与,錠剤と散剤の違いの数値も記載した.

⑥相互作用を独立させ,代謝酵素の面から,抗けいれん発作薬,向精神薬,一般薬との相互作用をわかりやすくした.特に小児でよく使用する一般薬との相互作用の活用と注意(一般薬の追加による副作用など)を提示した.

⑦抗けいれん発作薬同士の相互作用は極力具体的な増減% を調べ,血中濃度:↑↑著増(≧30%),↑増加(15~29%),↓減少(15~29%),↓↓著減(≧30%),→不変(± 14%以内)とした.

⑧抗てんかん発作薬を安全に使用するために,副作用とその対応を追加した.

⑨治療がうまくいかない場合の対応と合理的多剤併用療法の実際を新設し,相互作用,作用機序,薬物動態を用いて,使用法と増減のスピードを提示した.

⑩てんかんの併存症(発達障害,うつ状態・不安,睡眠障害,肝・腎障害)と対応を新設し,向精神薬と睡眠薬のピーク時間と半減期を明示した.

⑪重症児・者特有のてんかん治療の注意を追加:高齢者や体重が少ない成人の投与量,食事形態による血中濃度の変化,類似発作症状に対する治療薬選択の考え方を記載した.

⑫小児慢性特定疾病と指定難病のてんかんを示す疾患を大幅に追加した.少し分量が増し,あまり初心者向きではなくなった面は否めないが,通読する本ではなく困ったときにその部分を開けばすむように表を多く作成し,具体的な治療手順がわかるように症例を入れるスタイルは保持した.本書が少しでもてんかんに関わる皆様のお役に立ち,てんかんのご本人およびご家族のお役に立つことができれば幸いである.

最後に,小児神経とてんかんにお導きいただいた恩師,元国立精神・神経センター武蔵病院長 故・有馬正髙先生,多くの経験をさせていただいた指導医,同僚,レジデントの諸先生,そして患者およびご家族の皆様に深く感謝申し上げますとともに,改訂版の発刊にご尽力いただいた診断と治療社の皆様にも深謝申し上げます.


2025年7月

須貝研司

目次

第1章 てんかんの薬物治療の考え方

1 てんかんの治療方針

2 てんかんの薬物治療の基本的手順

3 薬物治療と実際の手順

4 治療における私の処方の工夫

第2章 抗てんかん発作薬の選択

1 治療結果からみたてんかん・てんかん症候群の分類と薬剤選択

2 禁忌薬

3 発作の好発時間による薬剤選択-ピーク時間と半減期の活用と注意

4 まぎらわしい発作症状に対する薬剤選択

第3章 抗てんかん発作薬の使い方

1 抗てんかん発作薬からみた有効な発作症状・てんかん症候群と実臨床での注意 

2 分服数,配分

3 開始,増量

4 外来での薬の増量,減量

5 開始時,中止時に注意すべき薬剤

6 薬剤変更時の注意

7 副作用と対応

第4章 薬物動態と血中濃度

 Ⅰ 抗てんかん発作薬の処方に必要な薬理項目とその意義

1 開始量,維持量,増量幅

2 血中濃度の意義と注意点

3 半減期とその意義

4 ピーク時間とその意義

 Ⅱ 薬物動態に影響を与える要因

1 抗てんかん発作薬の代謝の年齢による変化

2 蛋白結合率

3 相互作用

4 肝障害,腎障害

5 妊娠

6 食事の影響

7 食品と血中濃度

8 母乳への移行

 Ⅲ 抗てんかん発作薬の血中濃度モニター

1 どんな場合に検査すべきか

2 検査時期と検査時間

第5章 相互作用とその活用

1 相互作用における薬物代謝酵素の意義

2 抗てんかん発作薬同士の相互作用とその活用

3 抗てんかん発作薬と一般薬の相互作用への対応と活用

4 相互作用と半減期

5 食品による抗てんかん発作薬の血中濃度の変化

第6章 抗てんかん発作薬の作用機序とその応用

1 抗てんかん発作薬の作用機序と臨床的効果

2 作用機序の臨床応用

3 作用機序の臨床応用における注意

4 興奮抑制の作用機序

5 抑制増強の作用機序

6 興奮抑制と抑制増強をあわせもつ抗てんかん発作薬

第7章 薬物治療がうまくいかない場合の対応と合理的多剤併用療法

 Ⅰ 薬物治療がうまくいかない場合の対応

1 薬物治療がうまくいかない場合の基本的検討

2 不適切な薬物療法の原因

3 不適切な治療の鑑別と対応

4 真の薬剤抵抗性てんかん

5 真の薬剤抵抗性てんかんへの対応

 Ⅱ 合理的多剤併用療法

1 合理的多剤併用療法とは

第8章 てんかんの併存症への対応

1 発達障害症状

2 抑うつ状態,不安

3 睡眠障害

4 骨軟化症

5 肝障害,腎障害

第9章 てんかんとまぎらわしい発作性疾患

1 てんかん発作とまぎらわしい突発的症状

2 小児期のてんかん以外の発作性疾患

3 乳幼児期のけいれん性疾患と鑑別

4 てんかんと間違われやすい主な疾患

第10章 てんかん症候群(ILAE)

 Ⅰ 新生児期,幼児期

1 自然終息性てんかん症候群

2 発達性てんかん性脳症

3 病因特異的症候群

 Ⅱ 小児期

1 小児期の自然終息性てんかん

2 小児期の素因性全般てんかん症候群

3 小児期に発症する発達性てんかん性脳症またはてんかん性脳症

 Ⅲ 様々な年齢で発症するてんかん症候群

1 素因性,構造的,または素因性構造的病因をもつ焦点てんかん症候群

2 病因特異的てんかん症候群

3 多遺伝子性全般焦点合併てんかん

4 発達性てんかん性脳症,てんかん性脳症を示すてんかん症候群

および進行性神経学的退行を示すてんかん症候群

 Ⅳ 特発性全般てんかん(idiopathic generalized epilepsy:IGE)症候群

1 小児欠神てんかん(CAE)

2 若年欠神てんかん(JAE)

3 若年ミオクロニーてんかん(JME)

4 全般性強直間代発作のみを示すてんかん(GTCA)

 V ILAEのてんかん症候群分類にないてんかん症候群

1 非進行性疾患のミオクロニー脳症

2 症候性全般てんかん

第11章 潜因性・症候性焦点性てんかん

1 前頭葉てんかん

2 側頭葉てんかん

3 頭頂葉てんかん

4 後頭葉てんかん

5 島皮質(島回)てんかん

6 持続性部分てんかん

7 補遺

第12章 小児の良性けいれん

1 熱性けいれん

2 泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)

3 良性乳児けいれん

4 軽症胃腸炎関連けいれん

5 早期乳児良性ミオクローヌス

6 叩頭(head banging)

7 身震い発作(shuddering attack)

8 点頭けいれん(spasmus nutans)

9 過剰驚愕症(hyperekplexia)

10 小児良性発作性めまい

11 マスターベーション

第13章 重症心身障害児(者)におけるてんかん治療

1 重症心身障害児(者)のてんかん治療の特徴

2 重症心身障害児(者)施設でのてんかん治療における利点

3 重症心身障害児(者)のてんかん発作とまぎらわしい事象への対応

4 脳波

5 重症心身障害児(者)のてんかんへの対応―薬の選択

6 薬の使い方

7 重症心身障害児(者)病棟でのてんかんの薬物治療

第14章 治療終結・抗てんかん発作薬の断薬

1 発作の抑制と抗てんかん発作薬断薬後の再発

2 断薬開始のめやす

3 断薬の準備―断薬可能か否かの検討

4 断薬の手順―実際の断薬方法

5 断薬後のフォローアップと再発

第15章 てんかんと学校生活

1 学校が知りたい情報,指示書とそれに対する記載内容

2 返答のために必要な事項

3 発作に対する対応

4 学校で制限が必要なこと

第16章 けいれん発作時の応急薬

1 家庭,学校での対応

2 外来や病棟で長引くけいれんを止めるためのワンショット静注

第17章 てんかん治療における迷信・誤解

1 てんかん児ではグレープフルーツ,グレープフルーツジュースは

すべて禁止か?

2 てんかん児では抗ヒスタミン薬はすべて禁止か?

3 DZP坐薬で今起こっている発作を止められるか?

4 熱性けいれんで解熱剤を使うと,また熱が上がるときにけいれんが起こるので

使ってはいけないか?

第18章 小児のてんかんにかかわる公費負担制度

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書籍情報

  • ISBN:9784787882509
  • ページ数:220頁
  • 書籍発行日:2025年10月
  • 電子版発売日:2025年9月23日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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