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- 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2025
商品情報
内容
序文
序文
2018年に日本外科感染症学会が念願としていた『消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2018』が上梓され,国内外のエビデンスと実際の医療現場との橋渡しを果たし,多くの医療従事者にご活用いただいてまいりました.その後,7年の時を経て最新のエビデンスとわが国の臨床現場の実情を反映すべく改訂された『消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2025』を上梓することとなったことは,誠に喜ばしいかぎりであります.
本学会が研究会から学会へと改組発展し,私が理事長に就任したときから,本学会では,欧米のガイドラインに示された周術期管理だけではなく,日本の医療事情を考慮した日本独自のSSI予防を含めた周術期管理を確立することが必要と考え,様々な取り組みを行ってまいりました.まず,個人のみならず施設における外科周術期感染管理の充実を図るものとして「外科周術期感染管理医認定制度」を設立し,認定医だけでなく,教育医,教育施設の認定も行っております.2012年には優れた認定医育成のための「周術期感染管理テキスト」を上梓いたしました.また,本学会RCT委員会(委員長:故楠正人先生,三重大学)が2013年に発表された,肝切除術,胃全摘術,直腸癌手術に対する予防抗菌薬投与期間に関するわが国独自のRCTに基づいたエビデンスは,現在でも「術後感染予防抗菌薬の適正使用」に大きく貢献しています.その後も学会主導の研究を継続し,近年では,臨床研究委員会(担当理事:種本和雄先生,川崎医科大学)による「消化器癌手術における術後感染症が癌予後に与える影響の多施設共同調査」が行われ,食道癌,大腸癌,胆道癌,膵臓癌における術後感染症と癌予後についての調査結果を発表しています.さらに,2023年にはわが国の代表的な周術期管理を示した「周術期感染管理マニュアル」を発刊いたしました.
本ガイドライン初版(2018年版)は,2016年に真弓俊彦先生(産業医科大学)を担当理事・大毛宏喜先生(広島大学)を委員長とするガイドライン作成ワーキンググループにより,日本独自の医療事情を反映したわが国独自のエビデンスレベル,その推奨度も盛り込まれた実践的ガイドラインとして2018年に上梓されました.
その後も,改訂にあたっては,引き続き真弓俊彦先生を担当理事,水口徹先生(札幌医科大学大学院保健医療学研究科)を委員長としたガイドライン委員会にて,2018年版の全項目について再検索と再解析を実施するとともに,メタ解析やシステマティックレビューに基づくエビデンスの再評価など,多岐にわたる膨大な検討がなされました.ここに,日々尽力されたガイドライン委員会の皆様への深い敬意と感謝の意を表するとともに,その成果に大いに信頼を寄せております.
本ガイドラインが,消化器外科治療に従事される医師のみならず,看護師,薬剤師,感染対策チームをはじめとするすべての医療スタッフにとって,SSI予防における確かな羅針盤となり,患者様の安全確保と医療の質向上に寄与することを心より願っております.
このように,最新の知見と現場の実情を反映した本ガイドラインを,皆様の日々の臨床活動の一助としてご活用いただければ幸いです.
2025年8月
日本外科感染症学会名誉理事長
炭山嘉伸
刊行にあたって
手術部位感染(surgical site infection: SSI)は,消化器外科手術において依然として頻度が高く,患者の予後やQOL,さらには医療経済にも重大な影響を及ぼす合併症の一つです.2018年に日本外科感染症学会が初めて刊行した『消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2018』は,わが国における標準的な診療指針として多くの医療現場で活用されてきました.
それから7年.消化器外科領域では低侵襲手術やロボット支援手術の普及,周術期管理技術の進化,さらには高齢化社会の進展に伴うフレイル・サルコペニア患者の増加など,診療環境が大きく変化しました.これらの変化を受け,最新の科学的根拠に基づく,実践的かつ柔軟な指針が求められるなか,本学会は『2025年改訂版』として本ガイドラインを刷新いたしました.
本改訂版では,水口徹委員長を中心とした改訂委員会と,システマティックレビュー(SR)チームの協働のもと,GRADEシステムに基づく厳密な文献検索とエビデンス評価を実施し,診療現場で直面する課題に対して信頼性の高い推奨を提示しています.従来のclinical question(CQ)に加え,教科書的事項や臨床の常識に相当する項目をbackground question(BQ)として整理し,また将来的な研究課題をfuture research questions(FRQ)として明示することで,臨床実践と研究の両側面からアプローチしています.
加えて,低侵襲手術(ロボット支援手術を含む),フレイル・サルコペニア,口腔ケア,プロバイオティクス,ESBL保菌者,プレウォーミング,オラネキシジン消毒,周術期管理プログラム(ERAS/Fast Track)といった近年注目される周術期管理の要素も新たに取り上げ,現在の臨床実態に即した構成としました.すべての項目について最新の文献を再検索し,メタ解析やシステマティックレビューを行うことで,より質の高いエビデンスに基づいた推奨を提示しています.
なかでも,本改訂版において新設された「SSIケアバンドル」は,世界で初めて消化器外科手術に特化した包括的予防戦略として第8章に提示されたものであり,標準化された多角的介入の実現に寄与することが期待されます.複数の予防策を包括的に実施することでSSI発生率の低減を目指す画期的な取り組みとして,国内外の臨床現場に新たな指針を提供するものです.
また,冊子の軽量化と利便性の向上を目的に,詳細資料や補足情報はQRコードを介してオンラインで提供し,今後の情報更新や現場での即時活用にも柔軟に対応できる体制を整えています.
本ガイドライン作成過程において実施されたシステマティックレビューおよびメタ解析は,7編の英文論文として国際誌に発表されており,エビデンス発信という観点でも意義深い成果となっています.さらに,アンケート調査や各種アクセス指標を活用してガイドラインの普及状況を把握し,今後は推奨度の高い医療行為の遵守率と臨床効果の関係を評価することで,有用性の検証と次改訂の根拠とすることを予定しています.
本ガイドラインの目的は,消化器外科に携わる医療者に対し,科学的根拠に基づいた実践的な診療指針を提供し,SSIの予防と患者の予後改善に資することです.さらに,医療従事者と患者・家族,そして社会との相互理解のもと,より良い医療の実現を目指しています.
結びに,本改訂にご指導いただいた真弓俊彦担当理事と吉田雅博理事や尽力された水口徹委員長をはじめとする作成委員会,SRチームの皆様,そして評価小委員会に外部評価を含めた関係各位に,心より感謝申し上げます.本ガイドラインが日常臨床において広く活用され,消化器外科医療の質向上と患者さんの予後改善に貢献することを願ってやみません.
2025年8月
日本外科感染症学会理事長
北川雄光
目次
序
刊行にあたって
作成組織
別添資料の見方
クリニカルクエスチョン一覧
序章 ガイドラインの目的,使用法,作成法
1 本ガイドラインの目的
2 対象利用者
3 対象疾患
4 本ガイドライン利用上の注意
5 本ガイドラインの作成経過
6 本ガイドラインの作成方法
7 公聴会(医療者からの情報収集)
8 普及のための工夫
9 改訂について
10 ガイドライン作成過程および作成内容の普遍性
11 診療ガイドラインの出版後の評価とモニタリングについて
第1章 SSIの定義,診断基準,頻度,分離菌,リスク因子
BQ1-1 SSIの定義は?
BQ1-2 SSIの診断基準にはどのようなものがあるか?(実臨床)
BQ1-3 消化器外科領域の SSI の発生頻度は?
BQ1-4 消化器外科術後SSIの分離菌は何か?
BQ1-5 消化器外科領域手術におけるSSI発生のリスク因子は?
BQ1-6 術前のステロイド,免疫調整薬,生物学的製剤はSSIのリスク因子か?
CQ1-1 低侵襲手術(ロボット支援手術を含む)は開腹手術に比較してSSIを減らせるか?
第2章 SSIとサーベイランス,サルコペニア,フレイル
BQ2-1 SSIサーベイランスはどのように行うべきか?
BQ2-2 術前の鼻腔MRSA保菌者は非保菌者に比較してSSI発生率が高いか?
BQ2-3 SSIが発生するとSSIが発生しない場合に比べて医療費が高くなるか?
BQ2-4 フレイルはSSIのリスク因子か?
BQ2-5 サルコペニアはSSIのリスク因子か?
BQ2-6 消化器外科術後SSI予防のために適切な術後の監視期間はあるか?
BQ2-7 消化器外科術後SSI予防のために多職種でのSSIサーベイランスをするか?
CQ2-1 消化器外科術後におけるSSIサーベイランスのフィードバックはSSI予防のために有用か?
CQ2-2 SSIバンドル対策はSSIを減らせるか?
第3章 術前処置
BQ3-1 術前栄養状態不良の患者においてSSI発生率は高いか?
CQ3-1 術前栄養不良の患者における術前栄養状態改善はSSI予防に推奨されるか?
CQ3-2 栄養不良のない患者における術前免疫調整栄養管理は推奨されるか?
CQ3-3 鼻腔黄色ブドウ球菌保菌者に対する術前decolonization はSSI予防に有用か?
CQ3-4 サルコペニア・フレイル患者に対するプレハビリテーションはSSI予防に有用か?
CQ3-5 術前の禁煙介入はSSI予防に有用か?
CQ3-6 術前の禁酒介入はSSI予防に有用か?
CQ3-7 術前の腸管処置はSSI予防に有用か?
CQ3-8 クロルヘキシジンのシャワー・入浴・清拭はSSI予防に有用か?
CQ3-9 SSI予防に有用な体毛管理方法は何か?
CQ3-10 周術期口腔機能管理(口腔ケア)はSSI予防に有用か?
CQ3-11 周術期のプロバイオティクス・シンバイオティクスはSSI予防に有用か?
CQ3-12 周術期リハビリテーションはSSI予防に有用か?
CQ3-13 術直前の炭水化物投与はSSI予防に有用か?
第4章 予防抗菌薬投与
BQ4-1 術前の予防抗菌薬投与の適切なタイミングは?
CQ4-1 予防抗菌薬の術中再投与はどうするべきか?
CQ4-2 予防抗菌薬の術後投与期間はどうするべきか?
CQ4-3 過体重/肥満患者にセファゾリンを予防投与する場合の適切な投与量は何か?
CQ4-4 β-ラクタム系抗菌薬に対するアレルギーを自己申告する患者に対してβ-ラクタム系抗菌薬は投与可能か?
CQ4-5 ESBL産生菌保菌者では予防抗菌薬を変更するか?
第5章 当日処置および術中処置
BQ5-1 スクラブ法とラビング法では,どちらがSSI予防に有用か?
BQ5-2 術中保温はSSI予防に有用か?
CQ5-1 麻酔前プレウォーミングはSSI予防に有用か?
CQ5-2 どの消毒薬がSSI予防に推奨されるか?
CQ5-3 汚染度の高い手術で粘着式ドレープはSSI予防に有用か?
CQ5-4 リングつき創縁保護器具はSSI予防に有用か?
CQ5-5 術中の手袋交換や二重手袋,術中再手洗いはSSI予防に有用か?
CQ5-6 術中の手術器具交換はSSI予防に有用か?
CQ5-7 創洗浄はSSI予防に有用か?
CQ5-8 閉創前の腹腔内洗浄はSSI予防に有用か?
CQ5-9 高侵襲手術において術前ステロイド投与はSSIを減少させるか?
第6章 ドレーン留置
CQ6-1 胃切除術後のドレーン留置はSSI予防に有用か?
CQ6-2 待機的腹腔鏡下胆囊摘出術でのSSI予防にドレーン留置は有用か?
CQ6-3 胆道再建のない肝切除術でSSI予防にドレーン留置は有用か?
CQ6-4 膵頭十二指腸切除術でSSI予防にドレーン留置は有用か? また,ドレーン留置症例では早期抜去はSSI予防に有用か?
CQ6-5 膵体尾部切除術でSSI予防にドレーン留置は有用か? また,ドレーン留置症例では早期抜去はSSI予防に有用か?
CQ6-6 直腸がん手術後の腹腔内吻合や腹膜外吻合の経肛門ドレーン留置はSSI予防に有用か?
CQ6-7 結腸・直腸がん手術後の腹腔内吻合や腹膜外吻合のドレーン留置はSSI予防に有用か?
CQ6-8 虫垂切除術後の腹腔内ドレーン留置はSSI予防に有効か?
CQ6-9 皮下ドレーン留置はSSI予防に有効か?
第7章 創閉鎖・創管理・術後管理
BQ7-1 早期経口摂取,早期経腸栄養はSSI予防に有用か?
CQ7-1 消化器外科手術皮膚切開創の閉鎖において,どのデバイスがSSI予防に有用か?
CQ7-2 消化器外科手術の筋膜閉鎖において,抗菌吸収糸の使用は非抗菌吸収糸の使用と比較してSSIを減少させるか?
CQ7-3 創傷保護材はSSI予防に有用か?
CQ7-4 一次閉鎖創に対する予防的NPWTは標準法と比較してSSI予防に有用か?
CQ7-5 周術期の高濃度酸素投与はSSI予防に有用で安全か?
CQ7-6 SSI予防に有用な周術期の血糖管理目標は?
CQ7-7 周術期管理プログラム(ERAS®/Fast Track)はSSI予防に有用か?
CQ7-8 経腸栄養困難,投与量不十分例への早期補完的静脈栄養(SPN)はSSI予防に有用か?
第8章 SSIケアバンドル
1 消化器外科手術のSSI bundles とは?
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書籍情報
- ISBN:9784787882554
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2025年10月
- 電子版発売日:2025年10月10日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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