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- てんかんから始める精神医学
商品情報
内容
序文
はじめに
先日,ある会合で,新進気鋭の精神科出身のてんかん専門医の先生が,「精神科医はてんかん診療に関わらないですむか」というテーマのシンポジウムを精神科の学会でお願いされたと話していらっしゃるのを聞いた。うろ覚えなので,正確にはいくぶん表現は間違っているかもしれないが,いずれにしても少なからぬ大学の精神科医局で今やてんかん診療は,やらなくて済めばそれにこしたことはないある種のお荷物のような存在になっているのではないかという印象を受けた。大学の医局は今,三重苦の状況にある。終末医療,周産期の精神科的ケア,せん妄対策,レカネマブ導入のための脳神経内科との協力,摂食障害の受け入れなど,院内他科へのサービスは膨張する一方であり,身体合併症の治療,ECT,クロザピンの導入など精神科専門病院の機能の補完もあって,その業務は多様化かつ高度化し続けている。他方で,大学で生き残るための医学研究,研修医・学生の教育も要請され,英文論文の作成のノルマなども課せられる。さらには何か問題が起こるたびごとにアリバイ工作的にE-ラーニングが追加されて時間を取られ,それに加えて働き方改革で,執行猶予中の人を管理するような電子的な輪っかを付けられて行動を一々監視され,しかもそれをくらくらするほど面倒なエクセルか何かに自分で一々業務が終わると書き込む余分な手間も追加された。「この状況でてんかんにまで学習のためのタイム・コストをどう割けというのか」という悲鳴が聞こえてきそうである。さらに追い打ちをかけるように,働き方改革でバイトができなくなった現状において,今や賃金は下がる一方である。
しかし,言うまでもなくそれはてんかんに限ったことではないに違いない。神経心理学や認知症への精神科医の関心も,てんかんほどではないとしても先細りだと聞いたことがある(本当にそうかどうかは確認していません)。今や,臨床を自分の主戦場にして臨床焼けするほど(臨床にある程度のめり込んだ体験のある先生から感じる独特な感じを私はひそかにそう呼んでいる)臨床をしている先生が,必ずしも大学病院で応分に評価されてはいないという印象がある。老若男女を問わず,科を問わず,またサブスペシャリティを問わず,臨床にどっぷりつかり,そこで持ちこたえて患者さんを引き受けている先生は,ちょっと講演を聞いたり,飲み会でお話ししたりすると,すぐそうだと分かり,正直を言うと,心が少し弱っている時などには「おお,同志〇〇!」と叫んでハグしたい気持ちになった時期もあった。エビデンスが重要なのは言うまでもないことだが,エビデンス重視の副産物として,臨床経験を軽視する風潮が残念ながら無いとはいえない。今や,敬老パスをいただき,優先座席に座っても怒られなくなったれっきとした年寄になったので,年寄が言いがちな繰り言として聞き流してもらえば幸いだが,一度も臨床焼けしたことがない精神科医の言うことは,どこか信用できない気持ちが個人的には残ってしまう。
この本に収録していただいた論文は,精神科医のためのてんかん診療はどうあるべきかという問題設定の依頼原稿がほとんどである。てんかん診療というのは,どの立ち位置から眺めるかできわめて異なった様相をみせるという特徴がある。冬の富士と夏の富士,山梨側から見た富士と静岡側から見た富士,あるいは東京から遠望する富士が同じ山だとは思えないほど異なった姿を見せるように,てんかん診療は,現在は,小児科,精神科,脳神経内科,脳外科が関わっているが,それぞれの科から見えるてんかん診療の眺めは大きく異なっている。そして,自分のスキルが経験によって上がるのが体感できるクラフトマンシップ(クロウト感)に満ちたサブスペシャリティでもある。名探偵コナンの謎解きよりもずっと本格的な謎解きが堪能できる領域でもあるし,本邦の精神科におけるてんかん専門医が受け継いできた技術を継承するレア・アイテムに自分がなれるという特典も今ならある。
しかし,今や,精神科におけるてんかん診療は,それほどやっていても褒められもせず,それほどのお金にもならず,汗水は流さなくてはならず,さらにどこか昭和的でちょっとやぼったい。この論文集が,この領域の臨床に関心を持っている奇特な精神科医,脳神経内科医,脳外科医の先生たちへのわずかばかりのエールになればと願っています。
目次
はじめに
第1部 精神科医は働く場面に応じてどの程度のてんかんの知識を必要とするか
精神科医がてんかんをみるための標準的知識と技能
精神科医が専攻医として身に着けるべきてんかんの薬物療法
第2部 リエゾン場面において必要とされるてんかんの知識
抗てんかん薬のプラスとマイナスの向精神作用―全体の俯瞰―
てんかんにおける抑うつ状態に抗うつ剤は有効か―一つの小さなclinical questionからEBM について考える―
てんかんにおける不安とその対応
トランジション―てんかんの場合―
昏迷と非けいれん性てんかん発作重積状態“non-convulsive status epilepticus”
非けいれん性発作重積状態―NCSE概念再構築のすすめ―
第3部 精神科的てんかんおよびてんかんに関連する精神科における診療
「てんかん性格」の全体的展望
てんかんにおける人間関係
心因性非てんかん性発作
第4部 歴史的展望
本邦の精神科領域における抗てんかん薬使用の歴史と現状
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書籍情報
- ISBN:9784791111428
- ページ数:160頁
- 書籍発行日:2024年10月
- 電子版発売日:2025年10月28日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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