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- もっと知りたい解離性障害
商品情報
内容
かつては「多重人格障害」と呼ばれた病は,誤解を招く用語であるとして現在の世界的な診断基準では診断名として「解離性同一性障害」(略称:DID)と呼ばれていますが,その性質からいまだに非常に多くの誤解を持たれがちであると言えるでしょう。本書は,解離性同一性障害の豊富な臨床経験をもつ著者らが,当事者やご家族のために,主人格や人格交代などの専門用語を使いながらも,事例を交え,時には脳のメカニズムにも触れながらわかりやすく解説しています。解離性障害の患者さんにこれから出会う方々や,これからどのように治療していこうかと思案されている治療者の方々にも役に立つでしょう。
序文
イントロダクション
本書は解離性障害,特に解離l生同一性障害の問題を抱えた方との臨床経験を多く持つ4人が書いた本です。主に読んでいただきたいのは,当事者やその家族の皆さんですが,心理士や精神科医の先生方にも是非手に取っていただきたいと思います。私たちの印象では,解離性障害はまだまだその実際の姿が人々に理解されていません。それは臨床に携わる人々についても言えるようです。それどころか解離性障害について誤った考えを持つ臨床家も少なくありません。よって,これから解離性障害の患者さんに出会う方々,すでに実際に出会っておりこれからどのように治療を進めていくか思案されている方々にとって,本書が何らかの意味で参考になることを願っています。
もちろん患者さん自身が解離性障害についての本を読むことに反対する人もいることでしょう。「患者さんが不必要な知識を身につけて,解離性障害を装うことになったら困るのではないか?」という懸念は,専門家の間からも聞こえてきそうです。しかし私たちが一貫して持っているのは,誤った知識を持つ弊害こそが一番の問題であるという考えです。解離性障害は,非常に多くの誤解を招きやすいというのが,その性質が持つ特徴とさえ言えます。それは歴史的にもそうでしたし,現在の日本社会にも言えます。ですから解離性障害の当事者の方々にとっては, まず自分たちが正しい知識を得る機会が与えられることの価値は非常に大きいと思います。また解離性障害は,その診断を精神科医から告げられることで人生に悲観的になるような障害ではありません。解離性「障害」という用語は病的な状態という印象を与えますが,解離とは人の脳の働きのひとつであり,基本的には誰もが有する可能性のある機能です。ただそれが極端な形で作動し生活に支障をきたしているのが,解離性障害と呼ばれる状態です。ですからその性質をよく理解し,それを逆に制御して用いることで,人生を生きやすくするのが治療のひとつの目的です。そのためにも解離に伴う心の動きを,当事者である本人が深く知ることこそ回復への道筋になります。
用語・表記について
本書では,解離性障害の中でも特に誤解を受けることが多い解離性同一性障害について主に論じますがこの解離性同一性障害のことを「DID」と表記することにします。従来は「多重人格障害」という呼び方がなされてきましたが,この用語は誤解されることが多いため,アメリカの診断基準であるDSMの第4版(1994年) で新たな診断名(解離性同一性障害〔dissociativeidentity disorder〕) が提案されたという歴史があります。ただしこの解離性同一性障害という呼び名は少し長すぎるので,英語名のイニシャルを取ってDIDと呼ばれることが多いのです。
他の用語として,本書では主人格や交代人格やスイッチングという言葉を用います。主人格とは便宜的な言い方であり,現在一番多く表に出ている人格, 主としてその人の基本的な言動を司っている人という意味です。ですから主人格が誰になるかは, 生活史の時期や年代,置かれた状況ごとに違ってくる可能性もあります。ある時期はAさんの人格, また別の時期はBさんの人格, という事態も起こりうるわけです。また時には二人の人格がほぼ生活を分け合っているようなこともあり,常に明確な一人の主人格がいるとは限りません。
また交代人格とは,いくつかの人格状態の呼び方ですが,他に適切な呼び方もあるかもしれません。欧米では「交代人格(alter)」,「人格部分(apart of the personality)」,「アイデンテイティ(identity)」などと言われます。どれも一長一短がありますが,本書では交代人格, という呼び方で統一しておきます。交代人格というと, 主人格が困った時のピンチヒッター,交代要員というニュアンスが感じられるかもしれません。しかしここでは,全ての人格が現在表に出ている人格と交代する可能性がある, という意味で用いています。すなわち主人格もまた交代人格の一人として考えることができるのです。
それに関連することですが, 「現在表に出ている人格」とは,今現在においてその人の言動を主に担っている人格, という意味です。目の前の相手と言葉を交わしている当人, と言ってもよいでしょう。現状で表に出ていることが最も多い人格を主人格と呼ぶ, ということにもなります。ただし人と交流をしていない時のDIDの人は, しばしば「特に誰も出ていない」状態になることもあるようです。それは,いわば心の中でさまざまな人格たちが交流し合っている状態と考えることができます。この時に誰かに話しかけられると,急いで一人の交代人格が「出る」という現象が起きているのでしょう。
スイッチングとは, 一人の人格からもう一人の人格に「主人公」が交代することを指します。ここで「主人公」という曖昧な言葉を使いましたが, これはあくまでも外側にいる人にとって,誰が今現在の話し手となっているかを示しています。私たちがDIDの患者さんと話をしているとき,その人は一定の口調,表情しぐさを持った, 一人の人物という印象を受けます。もしその交代人格が「Aさん」という自覚を持っているとしたら,それがその時の「主人公」ということになります。しかししばらく経ってから,別の主人公として「Bさん」が登場すれば,私たちは目の前の相手がAさんとは異なる口調や表情や仕草の人である, という体験を持つでしょう。この時に人格のスイッチングが起きた, と表現します。このスイッチングという表現には,ある種の急な切り替え, というニュアンスが伴うかもしれません。確かに人格Aから人格Bへの交代はしばしば急で,時には一瞬で起こることが知られています。そしてこれは解離という現象のひとつの特徴とも言えます。一般的な精神症状では,ある心の状態から別の状態に一瞬で変わる, という現象はあまり起こりません。憂鬱な気分や被害妄想. あるいは躁的な気分などは,通常ではなだらかに,徐々に起きてくるものです。比較的急に起こるものとしてよく知られているのは.例えば覚醒レベルが急に上がる.あるいは急にパニックやフラッシュバックなどの形で不安が生じる. という症状があります。皆さんも例えば授業中に眠気をもよおしているときに突然先生に指名され一瞬で目が覚める. といった体験をお持ちでしょう。またパニック発作などでは,特定の状況やきっかけによって.急に不安が生じることもあります。ところが解離という現象は,あたかも脳で何かのスイッチが切り替わったように生じ.それに自分自身も周囲も驚くことがあるのです。人間の脳では通常ある種の興布の高まりやその低下には時間がかかるものです。統合失調症やうつ病の場合には.脳に一種の炎症のような障害が生じているとも考えられています。よって病気の発症には何らかの前兆がありまた回復にも時間がかかります。ところが解離性障害では.ある状態から別の状態への切り替わりが一瞬で生じることが多いため.脳の中ですでに並行して起きている状態の間の切り替わりと考えることができます。そこが他の精神疾患と顕著に異なる部分です。
イントロダクションですので, ここでは理論的な問題はこれ以上立ち入らないことにしますが.本書は解離性障害の当事者の方や,それを支える人々にとって助けになる内容となることを目指して書かれています。そして実際の解離性障害で何が起きているのかをなるべく具体的な例を挙げながら説明し.場合によってはその理解に役立つ脳のメカニズムにも触れたいと思います。
岡野憲一郎
目次
第1章 解離性障害の患者さんとの出会い方
1. はじめに
2. 日常生活にみられる症状の数々
3. 治療者にたどり着くまで
4. 精神科受診がゴールではない
5. 治療開始への不安や抵抗
6. 明確なDIDの形を取らない場合
第2章 解離を生み出すトラウマ
1. はじめに
2. 解離性障害に特徴的なトラウマ
3. トラウマの取り上げ方
4. トラウマと交代人格の出現
5. 交代人格は「抑圧された心」とは異なる
6. トラウマの結果として生まれる否定的な自己像
7. 治療関係に起こるトラウマの再現
第3章 治療構造のあり方とその工夫
1. はじめに
2. 治療契約を結ぶ
3. 治療構造の柔軟性を保つこと
4. 面接外に持ち出される問題
5. 構造が揺さぶられる事態への対処
第4章 家族への対応と連携
1. はじめに
2. 原家族によるトラウマの理解
3. パートナー(配偶者)および子どもとの関係
4. 症状悪化の家族背娯を理解する
5. 日常生活における治療のキーパーソン
6. トラウマ的環境に身を置かざるを得ない事態
第5章 自傷行為と解離
1. 自傷行為の不思議— 「先生,私の左足を切断してください!」
2. 自傷を見立てる一解離性か非解離性か
3. なぜ自傷をするのか
4. トラウマと自傷
5. 解離性の自術への対応
第6章 「黒幕さん」としヽかに関わるか
1. はじめに
2. 黒幕人格の定義といくつかの特徴
3. 黒幕人格のプロトタイプ
第7章 治療による変化とその意義
1. 初期から中期の課題
2. トラウマに向かい合う
3. 中期から後期の課題
4. 解離への偏見に立ち向かう_詐病や演技との鑑別をめぐって
付録 付録1 黒猫人格が形成される過程について
付録2 座談会一「人格の統合」は治療の目標だろうか?
付録3 コラム文化結合症候群との関連
付録4 解離の臨床Q&A
文献
あとがき
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書籍情報
- ISBN:9784791110940
- ページ数:216頁
- 書籍発行日:2022年4月
- 電子版発売日:2025年11月6日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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