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- 脳波に挫折した方に贈る 目からウロコの実践的脳波入門
商品情報
内容
脳波の学習で挫折した「脳波難民」といわれる人は多い。脳波は主にてんかんの検査で知られるが、実際には意識障害や脳機能低下などの症例においてもたいへん重要である。本書では、通常の医師が日常臨床で脳波を活用する部分に焦点を当て、脳波の実務的な活用方法を身近な症例を通して紹介。教科書的な内容ではなく、軽い読み物のような形式で短時間で読み通すことができる。初期研修医や専攻医はもちろん、幅広い診療科の人々にとって脳波のはじめの一冊として最適の書。
序文
まえがき
本書の目的
脳波で挫折したという声を本当に多く聞いてきました。今度こそ、とこの本を手に取ってくださった方もいるかと思います。本書は、そのような方がもう一度脳波の壁に立ち向かうお手伝いができないかと考えて書きました。
そんな経験がない初期研修医、専攻医をはじめ幅広い診療科の皆様に、脳波のはじめの一冊として手にとって頂いても、脳波はこんな感じで使い始めればいいのか、と参考になると思いますし、興味を持ってもらえると信じています。
脳波はてんかんの検査という意識が浸透し、脳神経の診療科でもてんかんの専門家以外が脳波に触れる機会が以前より減っています。私が所属する精神科ではその傾向が顕著で、接触する機会が減り疎遠になるという悪循環に陥っています。
教科書をいくつも買ったのに諦めたという声も聞いてきました。たしかに、てんかんや中枢神経の専門家を目指す人の「脳波入門書」は豊富にあるかもしれませんが、そこまでではない大多数の背中を押してくれる本は不足している気がしていました。
この本で一番お伝えしたいことは、てんかんにだけ脳波を使っていてはもったいないということです。日々の臨床で脳波を活用できる場面はいくらでもあり、病院全体を見回せばてんかん以外のほうが多いのです。その代表が意識障害や脳機能低下であり、手始めに使いやすいのは、画像検査では捉えることが難しい軽度から中等度の意識障害です。
意識障害に脳波を活用するのは今となっては傍流かもしれません。スキルとしても概ね完成されていて、目新しさもありません。しかし、どんなに診察しても判断に迷う場面で、私自身は何度も助けられてきましたし、てんかんの脳波判読に比べ、意識障害は覚えるポイントが少ないので、入門に最適だと思います。
脳波を使い始めようと思い脳波計があっても、指導者が身近にいない場合、いくつかの実務的な壁を越えなければなりません。脳波に触れる機会が多かった時代は自然と現場で涵養されてきたスキルであり、一度覚えてしまえば何でもないこの過程が、一人で脳波を学び始める時にはけっこうな壁になっているのではと感じてきました。
この、脳波を活用する場面に対する意識と、判読までの実務的な壁を少しでも低くできないか。本書は身近に指導者がいない方が、とにもかくにも身近な症例で脳波を使い始めるまでの内容となっています。自分で脳波をオーダーする、脳波を眺める、レポートを記載してみる、という内容が中心となっています。そのため、これまでの教科書で必須とされてきた脳波の成り立ちや、てんかん波の特徴といった必須事項については、思い切って触れていません。なので、とうてい教科書とは呼べない内容で、備忘録のようなものと考えて頂きたいです。
本書だけでスイスイ判読ができるようにはなれませんが、多くの人にとって鬼門となっていた最初の壁を越えるお手伝いはできるのではないかと考えています。
脳波は習うより慣れろが重要と感じてきました。とにかく自験例で使い始めることが重要です。こればかりは教科書で伝えることが難しく、判読を重ねることで感覚的に養っていく部分かと思います。しかし、一旦動き出せば疎遠と思えた脳波は身近になり、本棚の肥やしとなっていた「脳波入門書」が必携の書に変わります。
本書をきっかけに、もう一度脳波を使ってみよう、これぐらいなら自分でも使えるかもしれない、と一人でも多くの方に脳波を身近に感じて頂ければ望外の喜びです。
脳波離れ
精神科医になって間もない頃、参加したある学会の高名な先生の講演で「精神科医の脳波離れ」という衝撃的な言葉を聞いた。脳波を読める精神科医が激減し、このままでは絶滅するので何とかしなければいけないということだった。しかし、私自身脳波の勉強を始めたばかりだったので、ちょっと大げさだな、ここに若い精神科医がいますよと思い半信半疑で聞いていた。
あれから十数年が経ち、2023年に開催された学会の脳波ワークショップでも同じことが言われていて、むしろ状況は深刻になっていた。判読できないから使わない、疎遠になる、ハードルだけが上がっていくということが言われていた。
たしかに、自分の回りを見渡しても、精神科の日々の臨床で脳波を使っている仲間は、控えめに言って増えていない。
私の脳波勉強
私が東北大学精神科に入局した平成19年当時は、松岡洋夫教授(当時)が医局員のために毎週脳波判読会を開催してくれていた。臨床脳波学やてんかんの精神症状に関する第一人者で、入局したての若手が教授と話す機会などまずない時代だったから、判読会は教授の生声を聞くことができる貴重な機会だった。医局の大きなテーブルに紙の脳波を開き、教授を囲んで解説を拝聴する。1 ページごと丁寧に解説し、都度疑問点にも答えてくれるというとてもありがたい形式だった。
でもはじめは外来や病棟のいろはを覚えるのに忙しく、自分がいかに恵まれた環境にいるかわからなかったので、熱心に出席することはなかった。1年目に覚えたのは、脳波では本当に寝ているのか目をつぶっているだけなのか判別できるということ。これではたぬき寝入りが通じないじゃないか、とどうでもいいことをぼんやり考えていた。思い返しても驚くばかりだが、本当にそれぐらいしか覚えなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
転機は2年目だった。私は初期研修医制度が始まってまだ2年目の学年で、上の学年の入局者がいなかった。通常入局した翌年は関連病院に出向するが、幸い(?)大学病院での研修を継続できることになった。しかし、それまでの数年間入局者が減っていた影響で、7 名も新人が入ってきた。研修医の仕事である新患の予診や入院担当がことごとく新人にまわり、時間の余裕ができてしまった。
改めて脳波判読会に参加しようと思ったが、新人の手前何もわからないと恥ずかしいので、脳波の教科書を通読してから参加しようと勇んで読み始めたが、数日であっさり挫折した。みたこともない疾患の脳波に全然身が入らず、独特の用語も理解できなかった。
そこで、なぜそんな行動に出たのかわからないが、まずは実物から入ろうと思い、判読会前の脳波の下読みを、だめもとで申し出てみた。百年早いと言われるかと思っていたが、教授から消せるように鉛筆で所見を下書きしておくのならよいというお言葉をいただき、とにもかくにも最後まで脳波をめくって1 箇所でもいいからわかる所見を書いて、ひたすら添削していただくということを続ける機会に恵まれた。ちなみに挫折したその教科書というのは、松岡教授をはじめ医局の大先輩方がお書きになった名著である。
その後何年も経ったが、てんかんの専門家にも脳波の研究者にもなれなかった。脳波の普及啓発に努めるわけでもなく、てんかん診療ではない精神科の傍流で細々と脳波を利用し続けるだけだった。
そんな自分がこの本を書く転機となったのが、2023年11月に仙台で開催された第36回日本総合病院精神医学会総会である。現在の東北大学精神科の富田博秋教授が大会長で、私も事務局の一員としてお手伝いした。いろいろあって学会専門医を目指す医師に向けた脳波の教育セミナーを担当することになった。自分にまで回ってくるとは、脳波離れがいよいよ差し迫ってきたなと感じた。
医局内で新人向けに簡単な講義をしたことはあったが、対外的に、しかも学会で脳波の話をする機会はなかったので、かなり悩んだ。脳波の大家やてんかん専門医のような立派な話はできないし、どうしよう。思い悩んだ末に、背伸びはせず、普段自分が脳波を活用しているリエゾン精神医療での、主に意識障害での脳波の活用ついて話すことにした。
長い前書きになってしまったが、その講演を聴いてくださり、かつて脳波に挫折したある先生が星和書店さんにお声がけいただき、こうして私が本を書いてみるということになった。人生本当に何が起こるかわからない。
目次
1.準備編 使い始めまでの壁を越える
脳波の心理的な壁
脳波の物理的な壁
壁を越えるために
2.導入編 必要最低限の判読準備
電極には名前がある
電極の配置図(10−20法)
設定を「変えない」
検査の流れを理解する(開閉眼/睡眠/過呼吸/閃光刺激)
3.実践編 正常波形を眺めてみる
後頭部(O1−A1, O2−A2)に集中する
正常例を最後まで眺めてみる
脳波レポートの作成
4.発展編 活用事例を概観する
身近な症例で経験を蓄積
おすすめの脳波トレーニング
5.備忘録 脳波あれこれ
勇気を出して最初の一例
困った時の脳波
脳波も第一印象が大事
てんかん波を見落としたらどうしよう
仲間の増やし方
何冊読んだら一人前?
ぜんぜん眠れない
自動(AI)判読はいつ普及するのか?
技師さんとのコミュニケーション
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書籍情報
- ISBN:9784791111350
- ページ数:100頁
- 書籍発行日:2024年6月
- 電子版発売日:2025年11月5日
- 判:四六判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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