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精神科治療学 第38巻09号〈特集〉精神科領域における生活習慣病の予防と改善 ──日常診療で役立つポイント──

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2023年9月
  • 電子版発売日 : 2025年12月30日
¥3,190(税込)
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商品情報

内容

患者さんの生活習慣病を予防・改善することは、精神疾患の改善にもつながる。
精神科の患者さんには、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が合併していることが多い。本特集では、統合失調症、双極性障害、不安神経症、発達障害などの各精神疾患における生活習慣病予防の最新の知見と日常診療で役立つ介入方法を詳細に解説。生活習慣病への理解が深まり、日常診療にも役立つ特集。

序文

特集にあたって


精神疾患は,“不眠”と“不眠症”との違いなどで例示されるように,症状の存在だけでなく,その症状による生活機能の支障をもって,初めて継続的な支援の対象となる。これは,種々の身体疾患の診断基準と大きな違いをなしている。身体疾患の場合,『生活活動の制限』を診断基準に加えているものは,慢性疲労症候群など数少ない。精神疾患の概念には,その症状による活動制限,参加制約も含まれており,精神科医療のみならず社会的支援を必要とする状態が慢性的に続くことが想定されている。その意味で,あらゆる精神疾患は,複合的困難を生じる潜在的可能性をもっており,社会的支援の適不適によって,その病悩が大きく異なることにも合点がいく。

家族にとっても,自分の子ども,配偶者,親などが精神疾患になった場合,家族の人生は大きな進路変更を余儀なくされる。精神科臨床の現場では,本人の混乱以上に,同席する家族の疲弊や怒り,慟哭を受け止めざるをえない場面が往々にしてある。疾病の影響が本人に留まらず,周囲に長期間波及し,家族の人生を変えてしまうことを振り返っても,複合的困難に陥らない事例を想起するほうが難しい。

しかし,1つの精神疾患の病悩を抱えているだけでなく,例えばその背景に先天性疾患や知的発達症があり,より複雑な病像と重い生活機能障害を呈している人達がいる。また,疾患や障害の重複のみならず,例えば,日本国籍を有していないこと,経済的困窮にあること,家族を喪失し,社会からの手助けを得られないことなどから,社会的マイノリティに置かれてしまい,さまざまな支援の仕組みから弾かれ,その存在が見えづらくなっている人達もいる。そして,複合的困難にある人を支える家族や支援者の声はさらに埋もれてしまいがちである。

このような現状を踏まえ,複合的困難を抱える人達の実像を記録し,また,その方々を黙々と支えている声なき家族や支援者に光を当てる必要を感じ,今回の特集を企画した。本特集のテーマは,以下のような構成を意識した。

① 発達症と統合失調症や先天性疾患といった疾病の複合性や,強度行動障害のように対応支援の観点の複合性② 家族が引き受ける複合的困難の例として,小児がん患者と自死遺族の悲嘆③ 社会的マイノリティとしての外国籍の人の入院医療と地域支援④ 精神疾患と貧困,逆境と非行,被虐待児支援,ヤングケアラーなど,社会的課題として注目されている支援の最前線⑤ 発災12年目になっても未だ苦悩の続く原発事故と精神科臨床の現状本分野に精通している研究者,実践家からご尽力を賜り,それぞれの複合的困難の現状,疾病や障害の特性,治療ケアの実際,社会制度上の矛盾や課題を詳らかにしていただいた。紙面を借りてお礼を申し上げる。想定していたことではあるが,どのテーマも重く厳しく,疾病・障害としての,そして本来疾患そのものに帰結することではないはずの社会的制約の複雑さを知り,粛然たる思いになった。とくに,自らも福島で被災しながら,その地で支援活動を続けておられ,今回の特集の依頼において,自身の当事者性と向き合い,つらい執筆を引き受けていただいた,熊切力先生には,深く頭を垂れて感謝を申し上げたい。



複合的困難を抱える人達を支えるために,1人の支援者がすべてを担うことは非現実的であり,多職種による連携・協働が必要となることはもはや言うまでもない。しかし,現実には,少数の対象のために,多くの人的資源を投入しなくてはならず,時間生産性の観点からは課題も多い。また,医療と福祉の制度の違いに阻まれ,円滑な連携・協働ができないことも経験する。1例を挙げれば,強度行動障害に対して,福祉施設が対応する場合は種々の補助金制度が利用できるのに,医療機関では対象外となってしまうなど制度の不整合や不備に阻まれることは少なくない。

もう1つの支援方法として,当事者性を有する専門職による支援という可能性に期待している。

この方向性は,例えば家族に当事者をもつ精神科医療者による真摯な自己開示の姿勢と,具体的な体験をもとにした活発な情報発信に見出せる。さらには,自身の当事者性を冷静に分析しながら,あらたな支援方法を開発・提唱している新進気鋭の専門家も注目と共感を集めている。本特集でも,そのような方向性の中で,複合的困難に取り組んでいる人達の姿に触れることができた。

多くの読者にとって,どのような対応をすべきか迷う事例,知識としては知っていても実像に触れることのなかった事例などが多く提示されていると思う。もちろん,今回の特集以外の複合困難事例は枚挙に暇がなく,すべてを網羅することは適わなかった。本特集を手に取っていただいた方々が,同様な場面に取り組む際のヒントになるならば,編集子として何よりの喜びである。


渡邉 博幸

目次

【特集】精神科領域における生活習慣病の予防と改善 ──日常診療で役立つポイント──

特集にあたって

中野和歌子

精神疾患患者における生活習慣病予防および改善のための食習慣について

功刀 浩

統合失調症,気分障害における運動習慣と生活習慣病について

堀  輝

睡眠障害と生活習慣病との関連について

角谷 寛

生活習慣病と向精神薬に関する薬物相互作用について

織田裕美子,古郡規雄

統合失調症患者における生活習慣病の予防と改善──メタボリック症候群を中心に──

藤井久彌子,小畑利之,尾関祐二

うつ病患者における生活習慣病の予防と改善について

萩原康輔,陳  冲,中川 伸

精神科領域における生活習慣病の予防と改善について──うつ病を中心とした病態基盤との関連について──

吉村玲児

双極性障害における生活習慣の影響と対応について

寺尾 岳

不安神経症・強迫性障害における生活習慣病の予防と改善について

向井馨一郎,松永寿人

神経発達症と生活習慣病

高世駿也,三上克央

アルコール使用障害における生活習慣病の予防と改善

山下陽三

認知症の予防における生活習慣病への対応の効果と限界

清水秀明

精神疾患患者への健康行動支援について

大久保 亮

精神疾患患者における生活習慣病指導のポイント──禁煙支援を中心に──

川合厚子

研究報告

思春期の神経性やせ症に対するmultiple family therapyの試み─実施可能性に関する予備的研究─

松尾侑紀,森野百合子,岡 琢哉 他

臨床経験

レビー小体病の関与が疑われECTが有効であった治療抵抗性・不耐性の老年期うつ病の一例

三角雅裕,増田一樹,宮川雄介 他

躁うつ気分変動の代理症とみて慢性疼痛を治療した1例

小林聡幸

連  載

〔オピニオン〕 

ドパミンパーシャルアゴニストbrexpiprazoleからaripiprazole once monthlyへのスイッチ

段野哲也

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書籍情報

  • ISBN:9784022003809
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2023年9月
  • 電子版発売日:2025年12月30日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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