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- 精神科治療学 第38巻10号〈特集〉高齢の人に向き合う前に知っておきたい15のこと
商品情報
内容
超高齢社会にある日本の精神科臨床において、高齢の人への理解は欠かせない。しかし、ケアを行う医療者は、高齢の人の“こころ”を十分に想像できているだろうか。本特集では、こころを傷つけず、回復を促すための知識や心構えを、15項目のポイントにまとめた。認知症の人や、介護をしている家族など、今日もあなたの臨床現場を訪れてくる人たちに、どのような姿勢で臨めばよいのか……。望ましいケアを行うために必読の特集。
序文
特集にあたって
社会に高齢の人が増えると,精神科臨床でも高齢の人に出会う機会が増える。診察室で初めて出会った人は,通院を重ねるうちに老いる。児童や思春期の人を診療する精神科医も,陪席する高齢の家族に対応することがある。また,同居する高齢の人との関係性が子やその親のこころに影響を及ぼしていることがある。今日の精神科臨床において,高齢の人への理解は欠かせない。それでは高齢の人に向き合う前に知っておきたいことは何だろうか。精神科の診療も含めたケアが持つ加害性を弱め,有益性を高めるためにどのような知識が必要なのだろうか。
薬物療法については教科書や添付文書に記されている。人は高齢になるにつれて薬を代謝,排泄する力が弱まる。多くの向精神薬は体内に蓄積しやすくなる。初回処方量を成人の処方量より少量にとどめ,本人や,本人に代わって薬を管理する人へ副作用について十分に説明し,副作用を注意深く確認,評価する必要がある。薬の併用を減らすことも重要だ。それでは,精神科臨床や,それに留まらずこころをケアする場所で出会う高齢の人のこころを傷つけず,回復を促す態度を持つために,精神科医も含めてケアする人はどのような知識を備えておくとよいのだろうか。
ケアする人が望ましい態度を持つためには,高齢の人のこころを想像する必要がある。高齢の人のこころを想像するためには,本人の語りに触れ,生活を知ることが欠かせない。そこで本特集では認知症とともに生きる人,高齢の人を介護する現場にいる人の特別寄稿を冒頭に置いた。既存の教科書に綴られた専門用語や,精神科臨床にある文化や常識のようなものに触れ続けていると,ケアする人の中には知らぬ間に無用な先入観がしみついてしまう。そうした先入観を持ったままのケアする人の態度は高齢の人のこころを傷つける。二つの特別寄稿は,すでに高齢の人のケアを経験してきた人にとって耳の痛い言葉かもしれないが,ケアする人の中にある高齢の人や認知症のある人への先入観を弱めてくれるだろう。
高齢の人,認知症のある人との対話に,ケアする人はどこか消極的になりがちだ。そこにはケアする人の中にある先入観が垣間見える。しかし高齢の人,認知症のある人は豊かな対話をする力を持っている。高齢の人との対話において望ましい態度を備えるためには,認知症のある人との対話を重ねてきた人の経験から学ぶことが多くある。
そこには高齢の人をケアする人が備えておきたい基本的だが重要な知恵と技術があるはずだ。
高齢の人をケアする際には,高齢の人にある関係性に着目する必要がある。人のこころは他の人との関係性から影響を受け,変化する。Person─centered care,家族へのケア,権利擁護と意思決定支援には,関係性に着目する上で必要な知恵がある。高齢の人をケアする人,特に精神科医は本人がケアを拒む時やケアに困った訪問介護士,看護師たちから相談を求められた時など,本人に直接出会えない状況で,ケアする人たちへのケアを求められることがある。そうした時には特に高齢の人にある関係性に着目することが重要になる。
この三つのことが教えてくれる知恵を備えておくことは,本人に直接出会えなくても,本人の生きづらい理由にたどりつき,ケアする人たちへのケアを介して,状況を打開する力を与えてくれるはずだ。
高齢の人のこころを想像するためには,高齢の人がいる社会を知る必要がある。高齢の人を支援する施策,訪問支援の制度と課題,人と社会にある認知症へのスティグマ,社会的孤立と社会的処方,路上で暮らす高齢の人,ひきこもる子と暮らす高齢の人,社会課題化しやすい物を自宅に溜め込む高齢の人へのケアには,高齢の人がいる社会を知るための知恵がいる。社会は高齢の人のこころに影響を与え続けている。社会を知ることは高齢の人のこころを想像する力を与えてくれる。さらにケアする人が高齢の人への直接的なケアだけでなく,社会に働きかける意義と方法を教えてくれるだろう。
高齢の人をケアする際に見落とされがちだが重要なことがある。それは高齢の人のトラウマと,高齢になった知的障害のある人へのケアである。
戦争や災害が人のこころに強く影響することはいうまでもないことだが,生き抜いてきた高齢の人は「誰もが経験したことだから」と,思いを秘めたままでいることが少なくない。そうしたこころが傷ついた体験について尋ね,語りに耳を傾けるだけで苦痛が緩和されることがある。知的障害のある人にも高齢化が進んでいる。中でもダウン症のある人は40歳以降にアルツハイマー型認知症が生じやすくなることは卒前教育で学ばれることだが見落とされやすいし,政策的にも置き去りになりがちである。見落とされがちなこの二つについて知ることも,高齢の人をケアする人に欠かせない。
本特集が高齢の人をケアする人たちに望ましい態度を備える力になり,高齢の人が望ましいケアにつながる一助となれば幸いである。
大石 智
目次
【特集】高齢の人に向き合う前に知っておきたい15のこと
特集にあたって
大石 智
〔特別寄稿〕医師も患者も楽になるための4つの提案
樋口直美
〔特別寄稿〕介護の現場からみえる高齢の人に秘められた力
村瀬孝生
認知症とともに暮らせる社会という潮流
粟田主一
認知症のある人との対話に求められる姿勢
繁田雅弘
臨床現場でperson─centred careを実践する
水野 裕
高齢者ケアを理解するための枠組み─システム理論,力動精神医学,レジリエンス,自己─
渡辺俊之
認知症高齢者の権利擁護と意思決定支援
樋山雅美,成本 迅
PTSD診断のコツと,高齢の人のトラウマ反応
蟻塚亮二
知的障害やダウン症がある人の高齢化と認知症
木下大生
認知症という言葉の成り立ちとスティグマ
笠貫浩史
社会的孤立と社会的処方
西 智弘
高齢精神障害者への訪問支援─その制度と課題─
高木俊介
高齢化する路上生活者の支援とハウジングファースト─寛容さが回復的な効果を生む─
三宅弘志
ひきこもる子と暮らす高齢の人への支援
東出 香
高齢者のごみ屋敷事例に向き合う前に知っておきたいこと
菅原 誠
〔総説〕精神科医が引き受けるべき喪失の悲嘆─死してなお生きる高齢者 : 予期悲嘆(本人)と死別悲嘆(遺族)─
大西次郎
臨床経験
認知機能障害の仮装を疑われた一症例
壁屋康洋,山本暢朋
Donepezil内服開始後に自傷に至ったvery late─onset schizophrenia─like psychosisの一例
垰夲大喜,佐藤俊介,福本裕美 他
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書籍情報
- ISBN:9784022003810
- ページ数:124頁
- 書籍発行日:2023年10月
- 電子版発売日:2025年12月30日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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