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- 精神科治療学 第38巻12号〈特集〉周産期メンタルヘルスケアの最先端
商品情報
内容
本特集では、新しい向精神薬の使い方、認知行動療法や対人関係療法による対応、多職種協働支援システム、母子同室入院の実際等々、今後の展開・普及が期待される臨床実践について詳細に解説。長年かけて培われた臨床知が投入された必読の特集。
序文
特集にあたって
日本の出生数は7年連続で減少し,2022年は,過去最低だった21年を4万人以上下回る770,747人と,ついに80万人を割り込んだ。しかし,その一方で,全国児童相談所による2021年度の児童虐待相談対応件数は,前年度より2,615件増え,20万7,659件と過去最多を更新した。このような状況の背景には,妊娠・出産・育児における社会的困難や主たる養育者のメンタルヘルス不全があることが指摘されている。日本においては,この問題にいち早く警鐘を鳴らし取り組んだのは,産婦人科医や助産師,保健師など母子保健の専門家・実践家であった。彼ら彼女らから強い危機感をもって広がった周産期メンタルヘルスへの集学的な取り組みは,今日,多くの精神科医療関係者が関心を持ち積極的関与を期待されるテーマとなった。
2023年4月に発足したこども家庭庁においても,周産期メンタルヘルスに重点を置く施策の展開が図られている。妊産婦や新生児・乳児を対象とした母子保健機能とマルトリートメントや虐待防止などの児童福祉機能を一体化した『こども家庭センター構想』に示されるように,今後は,母子・精神保健医療福祉と,小児科医療・児童福祉との連結による包括的支援が求められる。
様々な専門性を持った保健・医療・福祉・教育・研究職が,共通の理解をもとに周産期メンタルヘルスを担うためには,非営利的な学術団体によって作成された共通指針が必要となる。現在,妊産婦のメンタルヘルスに関しての詳細なガイドライン,診療ガイドが日本語で立て続けに作成・公開されている。例えば,日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の『産婦人科診療ガイドライン─産科編2020』1),日本精神神経学会・日本産科婦人科学会が監修した『精神疾患を合併した,或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド』2)や日本周産期メンタルヘルス学会の『コンセンサスガイド2023』3)などをオンラインでだれもが参照できる。
また,精神科薬物療法に関しては,日本神経精神薬理学会・日本臨床精神神経薬理学会の『統合失調症薬物治療ガイドライン2022』4),日本うつ病学会の『診療ガイドライン双極性障害(双極症)2023』5)において,周産期治療について臨床疑問を設けて詳しく解説している。これらのガイドは,その時点での最新の臨床研究知見をもとに構造的レビューを行って作成されているもので,精緻詳細な教科書的役割や当事者・家族と支援者との治療に関する意思決定を円滑に行うための重要なツールとなりうる。
各種ガイドの活用による妊産婦のメンタルヘルスケアの普及や充実が真になされているかの検証は,厳密には今後の実証研究の結果を待たなくてはならないとしても,編集子が関わる精神科臨床の周囲では,妊産婦のメンタルヘルスに関わる専門職が増えてきていることを大いに実感しているところであり,本分野を長年にわたり地道に築き上げてきた多くの先達に感謝する思いである。
しかし一方で,未だ多職種間(とくに母子→精神)の円滑な連携が整備されている地域は少なく,各自治体・圏域で,実情に即した連携・支援システムの構築を模索している状況が続いている。さらに,母子・小児・精神保健医療連携となると,どのような施策や制度をベースにして展開するのが現実的なのかの検討を含めて,議論のスタートラインにようやく立ったという印象である。
精神科的治療・支援に焦点を当てると,うつや不安以外の精神症状に対してのスクリーニングや適切な初期対応の方法はまだ明確ではない。注意欠如・多動症(ADHD)治療薬を含む最近の新薬や妊産婦に処方されうる和漢薬の情報なども実証的なデータが乏しく,前述した種々のガイドラインでは取り上げられていない。精神療法・心理療法に関しても,精神科医療の非専門家である母子保健医療者がどこまで対応できるのか,実施の工夫はあるのかなど,多くの現在進行中の臨床課題が山積している。さらには,母児同室入院治療についても,現在の日本の医療制度下で実施可能なのか,実施するとすればどのような方策があるのかなど,妊娠出産時のみならず,その後の母児のこころの支援,児の社会的成長や発達の支援を担う精神科医療側として,避けては通れないテーマとなっている。
今回の特集では,構造的レビューやそれをもとに作成した各種ガイドラインでは網羅しきれなかった新しいトピックスや,現時点ではまだ一部の先進的・試行的な取り組みかもしれないが,今後の本領域のブロックバスターとして展開・普及が期待される臨床実践に焦点を当てた。各執筆者には,本領域の第一人者や新進気鋭の研究者・実践家に依頼し,斬新かつ豊かな実践報告や論考を賜った。この場をお借りして深く感謝申し上げる。
多くの読者に,周産期メンタルヘルスケアが,精神科医療が長年をかけて培ってきた臨床知を惜しみなく投入することを切望されている分野であることを知っていただき,すでに「自分たちには縁遠いニッチな領域」ではなく,実現可能な精神科医療の未来像の1つであることを感じていただければ,編集子として幸甚である。
1) https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2020.pdf
2) https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=87
3) http://pmhguideline.com/consensus_guide2023/consensus_guide2023.html
4) https://www.jsnp-org.jp/csrinfo/03_2.html
5) https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2023.pdf
渡邉 博幸
目次
【特集】周産期メンタルヘルスケアの最先端
特集にあたって
渡邉博幸
わが国の周産期メンタルヘルスのこれまでの発展と今後の課題
鈴木利人
妊娠・授乳期での新しい向精神薬の使い方
伊藤賢伸
妊娠・授乳期における漢方薬の使い方
山田和男
妊産婦の不安・強迫への対応
清野仁美,松永寿人
周産期リエゾン
竹内 崇
周産期メンタルヘルスケアについての地域における多職種協働支援システム
立花良之,小泉典章
妊娠と薬情報センターの活用
藤岡 泉,村島温子
周産期の抑うつ・不安に対する認知行動療法
南 房香,相川祐里,横山知加 他
周産期うつ病に対する対人関係療法─治療と予防─
利重裕子
不妊治療における心理社会的ケア・心理カウンセリング
小泉智恵
トラウマインフォームドケアを援用した妊産婦支援
田口奈緒
Web や IT デバイスを活用した周産期メンタルヘルスプロモーション
久保田智香,蟹江絢子
周産期メンタルヘルスケアを地域で協働するための「のぞえモデル」の取り組み─母子同室入院の実際とその意義について─
堀川直希
女性のこころ専門外来の取り組みと工夫─ポリヴェーガル理論の視点から─
榎原雅代,南 房香,後藤美智子 他
〔総説〕児童虐待予防にかかわる「こども家庭ソーシャルワーカー」の機能─地域連携(社会福祉士)と親支援(精神保健福祉士)─
大西次郎
研究報告
統合失調症患者を対象としたメタ認知トレーニング効果の予備的検討
江口 聡,里村嘉弘,山崎修道 他
Letters to the editor
経皮吸収型製剤が統合失調症患者のセルフスティグマに与える影響
牧 徳彦
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書籍情報
- ISBN:9784022003812
- ページ数:124頁
- 書籍発行日:2023年12月
- 電子版発売日:2025年12月30日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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