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- 精神科治療学 第38巻増刊号〈特集〉アディクションとその周辺
商品情報
内容
この10年でアップデートされたアディクション分野の診断・治療・回復支援を紹介。アルコール使用症、薬物使用症、ギャンブル症のみならず、ゲーム症、強迫買い物症やクレプトマニア、性的問題行動などの嗜癖行動、さらには摂食障害やボディモディフィケーション、皮膚むしり症といった周辺領域も取り上げた。各分野の第一人者である臨床実践者や研究者が執筆。アディクション分野の広がりと奥深さ、面白さがわかる。
序文
発刊にあたり
2013年に本誌28巻増刊号「物質使用障害とアディクション臨床ハンドブック」を刊行してから,ちょうど10年が経過した。この間,わが国のアディクション分野で生じた変化は,「激動」といってもよいものだったと感じている。
好ましい変化としては,まずは,国の施策における明確な位置づけを挙げなければなるまい。アルコール使用症分野では,2013年にアルコール健康障害対策基本法が,薬物使用症分野では,2016年に再犯防止推進法がそれぞれ成立し,2017年には再犯防止推進法に基づいて再犯防止推進計画が閣議決定された。ギャンブル症分野では,2016年の「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(通称,IR推進法)の成立を受け,2018年にギャンブル依存症対策基本法が成立した。これらの法律の成立はいずれも,アディクション問題対策がわが国の重要施策のひとつとなったことを意味する。事実,2017年より,国は依存症対策全国拠点設置事業,ならびに,都道府県・政令指定市に対する補助事業として依存症総合対策事業が始まっている。
精神医学領域でも大きな変化がみられた。診断においては,国際的診断分類において,ギャンブル症やゲーム症といった嗜癖行動が物質使用症と同じ診断カテゴリーに位置づけられることとなった。また,治療においては,2016年には薬物使用症に対する依存症集団療法が,そして2020年にはギャンブル症に対する依存症集団療法が診療報酬の算定項目に加えられるとともに,2019年には,飲酒量低減薬nalmefene(商品名「セリンクロⓇ」)が発売された。これらはいずれもアディクション治療の選択肢を広げ,この問題に挑戦する臨床家を増やすのに貢献したことはまちがいない。
もっとも,治療の選択肢が増えたとはいえ,課題は依然として山積状態といわざるを得ない。実際,上述したような定式的な治療プログラムや治療薬だけで問題が解決する患者というのは,むしろ稀な部類だからである。それどころか,患者のなかには,神経発達症やトラウマ関連問題を併存するものも少なくなく,臨床家はそうした患者に,コスト度外視の時間と労力を費やして個別的治療を提供している。この点は10年前と少しも変化していない状況である。
それから,好ましくない変化についても触れておきたい。まず,アルコール問題に関しては,わが国独特の「税収ありき」の酒税法が,「ストロング系」という一種のモンスター的アルコール飲料を生み出し,一部の人たちのアルコール問題を深刻化させている。また,薬物問題では,10年前にわが国を席捲した危険ドラッグは,規制強化や医薬品医療機器等法改正によって鎮静化したものの,薬物使用症患者数は皮肉にもその当時よりも増加している。今日,臨床現場で問題となっている薬物は,処方薬や市販薬といった,「規制困難な薬物」である。さらに,ギャンブル・ゲーム問題については,コロナ禍において急速に進んだ生活全般のオンライン化の影響を受けて,主戦場をインターネット空間へと移し,射幸性,耽溺性,損失金額を等比級数的に増大させつつある。
要するに,精神科臨床において,アディクション分野ほど,社会や文化の動きをビビッドに反映し,あたかもカメレオンのように時代の変化に合せてその表層の装いを変容させる領域もないだろう。その意味で編者は,このタイミングで改めてアディクションの増刊号を刊行するのは,まさに時宜を得たものと感じている。
今回の増刊号では,まずは,上述した最近10年間におけるアディクション分野の進歩を反映して,診断や治療・回復支援に関するアップデートを行った。それとともに,アルコール使用症・薬物使用症・ギャンブル症の3種のアディクションに限定した前回の内容を一新し,ゲーム症,買い物依存やクレプトマニア,性的問題行動といった嗜癖行動,さらには,摂食障害やボディモディフィケーション,皮膚むしり症といった,アディクションの辺縁領域にまで手を広げることも試みた。それによって,様々な対応困難なメンタルヘルス問題に対しても,アディクションという見立てによって治療的なアプローチができる可能性を模索し,多くの若い臨床家がこの分野に関心を抱く契機になればと願っている。
本増刊号は決してエビデンスベースドなガイドラインでなければ,アディクション治療・支援の決定版でもなく,あくまでも多くの臨床家に,「アディクション臨床の現在」を示すことを最重要課題として企画されたものである。とはいえ,いずれの項目も,編者が自信を持って推す,各分野の第一人者である臨床実践者や研究者に執筆してもらった。アディクション分野の広がりと奥深さ,そして何よりも面白さを感じていただけるものと期待している。
松本俊彦
目次
Ⅰ.アディクション総論
1. アディクションとは何か─凝り性や没頭と何が違うのか?─ 松本俊彦
2. 依存症対策全国センターの活動 遠山朋海
3. アディクションアプローチの現在─新たな展開とその原点を探る─ 信田さよ子
4. ハームリダクションとは何か─政策と個別支援における生かし方─ 高野 歩
5. 依存症概念の成立と自助グループ 岡﨑直人
6. 戦争と薬物 園田 寿
7. アディクションの発症機序と病態を説明する理論
1) 行動薬理学から見たアディクション─動物を用いた条件付け場所嗜好性試験─ 富山健一
2) ドパミンを無視してアディクションを理解すること勿れ─報酬系とドパミン神経伝達について─ 沖田恭治
3) アディクションは強迫スペクトラム障害として説明可能か 松永寿人
4) 自己治療仮説 松本俊彦
5) 報酬回路不全症候群 谷渕由布子
6) 二重過程理論から見た嗜癖行動 阿部修士,横谷謙次
7) 嗜癖行動の神経基盤 小林七彩,高橋英彦
Ⅱ.アディクション各論
1. 物質使用症
1) アルコール問題の現状と課題─疫学と国の対策─ 瀧村 剛,松下幸生
2) 薬物問題の現状と課題─疫学と国の対策─ 嶋根卓也
3) 物質使用症の概念・症候・診断 松本俊彦
4) 物質使用症の治療総論
(1) 物質使用症に対する薬物療法─その精神薬理学的メカニズム─ 井手聡一郎,池田和隆
(2) 物質使用症に対する心理社会的治療
① 認知行動療法の手法を活用した集団療法 今村扶美
② 個人認知行動療法による依存症治療 村瀬華子
③ マインドフルネスを活用した再発防止プログラム 吉田篤史,平岡雄哉,小砂哲太郎
④ マッピングを用いたアディクション治療 橋本 望
⑤ 薬物問題をもつ女性に対する支援─アディクションとトラウマ双方に配慮した治療法「Seeking Safety」─ 近藤あゆみ
⑥ コミュニティベイスドの精神保健福祉を目指す「併存性障害のための統合治療(integrat ed treatment for co─occurring disorders : ITCOD) 」の実装のために何ができるのか?─アディクションと精神疾患を合併した精神障害者を支援するために─ 池田朋広,石川亜弓,種田綾乃
⑦ 治療共同体エンカウンター・グループによる回復 引土絵未
⑧ 民間回復施設と自助グループ 加藤 隆
⑨ CRA(Community Reinforcement Approach) /CRAFT(Community Reinforcement And Family Training) 山本 彩
⑩ ふつうの精神科クリニックでできるアディクション治療 上村敬一
⑪ 市販薬をODする若年者ともよく出会う─ハームリダクション東京のオンライン・アウトリーチ─ 古藤吾郎
5) アルコール使用症
(1) アルコール使用症の症候と医学的障害 木村 充
(2) アルコール症の医学的治療 湯本洋介
(3) アルコール使用症の地域支援 佐古惠利子,岸田真樹,竹内隼人 他
(4) 高齢者医療におけるアルコール使用症 射場亜希子
(5) アルコール依存症に対するデジタル介入の現状 浜村俊傑
6) 薬物使用症の症候と治療
(1) 覚せい剤使用症 成瀬暢也
(2) 大麻使用症 小松﨑智恵
(3) ベンゾジアゼピン受容体作動薬使用症 宇佐美貴士,松本俊彦
(4) 市販薬使用症 沖田恭治,石井香織
(5) タバコ使用症 入江智也
(6) 薬物使用症治療における司法的対応の原則 松本俊彦
7) アルコール・薬物問題を抱える家族の支援─CRAFTの理念を用いた支援─ 吉田精次
8) 物質使用症をめぐる課題
(1) アルコールに関連する社会的問題と対策─飲酒運転─ 真栄里 仁
(2) 更生保護施設における薬物乱用問題のある人に対する回復支援─特に刑の一部執行猶予制度における地域連携について─ 森田展彰
(3) 薬物使用と感染症─HIVとHCV─ 嶋根卓也,新田慎一郎
(4) カフェイン関連障害の臨床的課題─救急医療の立場から─ 小原佐衣子,上條吉人,高井美智子 他
(5) 緩和医療における薬物使用症─オピオイド鎮痛薬の不適切使用─ 山口重樹,櫻井秀嵩,山中恵里子
(6) ベンゾジアゼピン受容体作動薬の「常用量依存」の理解と対応 稲田 健
(7) 大麻関連施策の現状と課題─大麻規制,医療用大麻,CBDを巡る諸問題─ 正高佑志
(8) 精神科治療薬としてのサイケデリックス(幻覚薬) の可能性─日本における医療用サイケデリックスをめぐる裁判事例を中心に─ 蛭川 立
2. 嗜癖性行動
1) ギャンブル障害
(1) ギャンブル障害(オフライン・オンライン) の臨床的特徴と診断・評価 松﨑尊信
(2) ギャンブル障害の治療・回復支援
① ギャンブル障害に医療ができること 常岡俊昭
② ギャンブル障害に対する精神保健福祉センターでの取り組み 小原圭司
③ 民間回復施設の支援 田村 仁
④ 多重債務問題の現状とその歴史から見たギャンブル障害支援の現在と未来 安藤宣行
⑤ 民間団体によるギャンブル障害の家族支援 田中紀子
⑥ アプリをはじめとしたギャンブル問題に対するインターネットを通じた支援,介入 宋 龍平
2) ゲーム障害
(1) ゲーム障害の臨床的特徴と診断・評価 白坂知彦,常田深雪
(2) ゲーム障害の治療
① 医療機関での取り組み─通院・入院─ 佐久間寛之,大越拓郎
② 予防のために学校と家族にできること 吉川 徹
(3) 児童精神医学から見たゲーム障害─発達障害との関係─ 館農 勝
(4) eスポーツとゲーム障害 城野 匡,杉本啓介
3) その他の嗜癖行動
(1) クレプトマニア
① 臨床的特徴と併存症─特に摂食障害との関係─ 梁瀬まや
② クレプトマニアの医学的治療について 山下悠毅
③ クレプトマニアの責任能力について 古茶大樹
(2) 性をめぐるアディクション
① 性依存症および強迫的性行動症の地域トリートメント 斉藤章佳
② 性的問題行動─窃触症,窃視症,小児性愛など─ 毛利真弓
(3) 強迫買い物症─その臨床的特徴と医学的治療─ 大坪天平
3. アディクション概念の広がり─その異同と臨床的意義─
1) フード・アディクション(food addiction) としての摂食障害 沼田真一
2) 緩下剤乱用はアディクションか─薬理学的に依存性が確認できない物質への執着─ 松生恒夫
3) 痛みアディクションとしての自傷行為とボディモディフィケーション 松本俊彦
4) 皮膚むしり症は自傷なのかアディクションなのか 大塚篤司
5) ためこみ症とアディクション 中尾智博
6) ワーカホリックと働き方改革 堀 大介
7) CRAFTを用いたひきこもり支援─アディクションの家族支援の応用─ 境 泉洋
8) インターネットアディクション─承認欲求と自傷的自己愛─ 斎藤 環
9) 共依存とアディクション支援 水澤都加佐
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書籍情報
- ISBN:9784022003813
- ページ数:376頁
- 書籍発行日:2023年10月
- 電子版発売日:2025年12月19日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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