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- アディクション診療実践ガイド
商品情報
内容
序文
はじめに
本書を手に取っていただき,誠にありがとうございます.
私は本書を,日々の診療でアディクションに向き合う医療従事者の皆様にとって,明日からの診療に役立つ一冊にしたいという思いで執筆しました.そして,本書の実践による積み重ねが,日本のアディクション診療のさらなる発展につながることを願っています.
近年,日本でも違法薬物やさまざまなアディクションに関するニュースを目にする機会が増えました.大学生やスポーツ選手,芸能人による大麻使用,ギャンブルにともなう金銭トラブル,覚醒剤事件などの出来事が社会の関心を集め,大きく報じられています.しかし,私たちが目にしているのは,氷山の一角にすぎません.報道されることなく,日々アディクションに苦しんでいる人がいます.助けを求めたくても求められず,医療や支援につながる機会を失ったまま生活している人がいます.その現実は,ニュースからはなかなか見えてきません.
私自身も,渡米前は大麻や覚醒剤といった薬物の名前こそ知ってはいたものの,臨床で実際に患者さんを診療した経験はありませんでした.アディクションは,どこか自分の日常とは遠い世界の出来事でした.
転機となったのは,2018年に家庭医療専門研修のために渡米したことです.米国での日々の診療では,アルコール,オピオイド,覚醒剤,大麻,ギャンブルなど,実にさまざまなアディクションの患者さんと出会いました.診察室で語られるのは,単なる「サブスタンス使用」の話ではありません.そこには,慢性的な痛み,精神疾患,孤立,貧困,家庭環境,トラウマなど,一人ひとり異なる人生がありました.
アディクションをみるということは,そのサブスタンスや行動だけをみることではありません.その人の人生そのものを理解しようとする営みなのだと,患者さんから教えられました.その奥深さと患者さんの人生に寄り添う医療の重要性に魅了された私は,日本人として初めてアディクション診療の専門研修(Addiction Medicine Fellowship)を修了しました.
このフェローシップで学んだことは,診断や治療法だけではありません.私にとって最も大きかったのは,アディクションに対する価値観そのものを大きく変えたことでした.アディクションは,本人の意思が弱いから起こるものでも,本人の人格の問題でもありません.適切な治療と継続的な支援を必要とする慢性疾患です.しかし,社会や医療現場では,今もなお本人の意思や人格の問題という見方があり,その偏見やスティグマが,ときにアディクションそのもの以上に患者さんを苦しめ,医療から遠ざけてしまいます.
米国で診療を続ける中で私が強く実感したのは,違法薬物の所持や使用に対して罰則を科すだけでは,患者さんや社会全体の転帰は必ずしも改善しないということでした.一方で,適切な医療や支援につながり,安心して治療を受けられる環境が整えば,人生を大きく立て直す方々を数多く目の当たりにしました.
アディクション診療は,一人の患者さんを救うだけではありません.家族を支え,地域を支え,社会全体に長期的な恩恵をもたらす医療でもあります.だからこそ,本書では診断や治療法だけでなく,その背景にある考え方や診療の姿勢についてもお伝えしたいと考えています.知識だけでなく,「どのような眼差しで患者さんと向き合うのか」という視点も,読者の皆様と共有できれば幸いです.
アディクション診療は決して専門医だけが担うものではありません.プライマリ・ケア医をはじめ,救急医,精神科医,内科医,外科医など,あらゆる診療科の医療従事者が日常診療の中でアディクションの患者さんと出会います.その出会いは,ときに患者さんの人生を大きく変える最初の一歩になるかもしれません.本書が,読者の皆様にとってアディクションをより身近な疾患として理解し,自信を持って患者さんと向き合うための一助となれば,これ以上の喜びはありません.
最後に,この8年間,米国で多くの学びの機会を与えてくださった指導医や同僚の皆様,そして何よりも,私に多くのことを教えてくださった患者さんと地域社会の皆様に,心より感謝申し上げます.本書が,日本におけるアディクション診療のさらなる発展と,アディクションに苦しむ方々へのよりよい医療の実現に,少しでも貢献できることを心から願っています.
2026年7月
Saint Louis University Family and Community Medicine
Associate Professor
園田健人
目次
推薦の序:魂の回復を支える対話の臨床学 徳田安春
Foreword Fred Rottnek
はじめに 園田健人
Ⅰ 総論
A addiction medicineとは
1 アディクションとは?
2 日本におけるアディクション診療の必要性
3 脳科学的な視点から
B 診療はここがポイント
4 場面ごとに応じた役割の違い
5 医療従事者のメンタルケア
6 病歴聴取
7 治療のフレームワーク
C 患者を理解する
8 併存疾患
9 予防手段
10 harm reduction(ハームリダクション)とは?
Ⅱ 各論
A サブスタンスへの依存
1 タバコ
2 アルコール
3 オピオイド
4 ベンゾジアゼピン
5 市販薬の乱用
6 大麻
7 覚醒剤(アンフェタミン類の精神刺激薬)
8 コカイン
9 MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン)
B プロセスへの依存
10 ゲーム障害
11 ギャンブル
C ケース紹介
症例
Ⅲ アディクションの理解をさらに深める
1 動機づけ面接
2 患者が家族と受診に来ている場合の対処法
3 患者中心の言葉遣い
4 アディクションを取り巻くスティグマ
5 高齢者におけるアディクション
6 トラウマとアディクション
Column
カフェイン
ゾンビタバコ
ラッシュ
ソーシャルメディアアディクション(SNSアディクション)
砂糖
薬物と法律の関係
あとがき
索引
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書籍情報
- ISBN:9784787883025
- ページ数:256頁
- 書籍発行日:2026年10月
- 電子版発売日:2026年9月18日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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