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介護倫理ケーススタディ;介護の現場には倫理的問題があふれている!

  • ページ数 : 160頁
  • 書籍発行日 : 2026年9月
  • 電子版発売日 : 2026年10月7日
¥3,520(税込)
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商品情報

内容

ケアの実践を、思いやりと共感にあふれたものにするために!
介護に倫理的問題なんてあるの?
こんなケース、あなたの身近にありませんか? 高齢者を“一人の人”として尊重する「倫理的ケア」は、介護における最も基本で、本質的な要素です。日々のケアには、倫理的に考えなければならない事柄がたくさんあります。これらの「倫理的ジレンマ」に気づくことが、倫理的ケアを実践する第一歩なのです。高齢者介護・認知症介護に一生懸命取り組んでいる、そんなあなたに手に取って欲しい1冊です。

序文

はじめに



介護の現場には倫理的問題があふれている!

このような事実に気づかないで、忙しい日常ケアに翻弄されているケアスタッフが多くいます。本書は、みなさまの身近にあるさまざまなケースを提示することによって、「これは介護の技術的問題だけでなく、倫理的問題を含んでいるのだ」と気づいていただけることを目的としています。各ケースをピックアップして読んでいただいても、1つ1つで完結して学べるように構成されています。ご自身の現場で「あの問題と似ている」「この間のケースと同じだ」と関心をもたれた事例を拾い読みすることでも、十分に倫理的感性を研ぎ澄ますことができます。

高齢者を“一人の人”として尊重する「倫理的ケア」は、介護における最も大切で、本質的な要素です。日々のケアには、倫理的に考えなければならない事項がたくさんあるのだという「倫理的気づき」は、みなさまの日々のケアの実践を、思いやりと共感にあふれたものにしてくれます。

「倫理的気づき」の重要性

倫理的ジレンマに気づくことが、倫理的ケアを実践する第一歩です。

例えば、ケアの現場ではこんな言葉が聞かれます。「私たちは毎日、一生懸命ケアの実践をしている」「介護の専門技術と経験で、徘徊にだってきちんと対処している」「介護に倫理的問題があるなんて気づかなかった」「日常介護に忙しくて、慣れすぎて、もしかしたら、じっくり考えたことがなかったかもしれない…」。

実際、介護技術の工夫によって、改善される問題も多々あります。しかし、これらに「倫理的問題が含まれている」と考えて、「倫理的気づき」をすることによって、より的確な視点で日常ケアに潜んでいる問題をとらえることができるようになります。その結果、日々の介護の実践は、一人ひとりの利用者や入所者に対して、思いやりと共感にあふれたものにすることができます。

倫理的ジレンマ(=微妙な倫理的価値の対立)

例えばこんなケースは、どうでしょうか? ある熱意のあるケアスタッフが、「高齢で認知症のAさんは、できないことが多いから、私たちケアスタッフが代わりに決めてあげて、ご本人のために一生懸命いろいろやってあげなくては…」と言ったとき、もう一人のケアスタッフは、「でも、Aさん自身、自分でやったり、決めたいこともあるのでは…」と疑問を投げかけました。

どちらの意見も、一見、明らかに間違っている意見とはいえないわけです。しかし、よくよく考えてみると、それと異なる考え方があり得ます。しかし、その異なる考え方も100%正しいのかといえば、必ずしもそうとはいえません。このように、どちらかが明らかに正しく、どちらかが明らかに間違っているとはいえない、あるいは、どちらかが明らかに優位に立ち、どちらか明らかに下位にあるのかを決めることができない、そのような微妙な倫理的価値の対立を、「倫理的ジレンマ」と呼びます。したがって、私たちは直感だけではなく、しっかり立ち止まって、じっくり考えなければなりません。

一度、立ち止まって考えてみる

例えば、このようなケースもしばしば見かけるのではないでしょうか? 歩き回って困る入所者に対して、嘘をついたり、ごまかしたりして、無理やり部屋に連れ戻すといった場面です。ケアスタッフの中には、「嘘をつくのはよくない」と考える人もいますが、「スケジュールどおりに介護をしなければならないから、嘘をつくのも仕方がない」と考える人もいます。

日常の介護現場における場面で、スタッフ間で「意見にズレがある」とか、「どうもおかしいなと思う」とか、あるいは「態度や接し方に一貫性がない」「しっくりこない」、このようなことを直感で感じたときには、実際、倫理的ジレンマに直面していることが多いわけです。まず、直感で「おかしい!」と感じたら、そこで一度、立ち止まって、じっくり、その根拠について論理的に分析し、考えてみることが大切です。

倫理的ジレンマに気づく

日常ケアには、多くの倫理的問題が潜んでいるわけですが、忙しい日常の業務に忙殺されていると、それらに気づく余裕がなく、ただただ流されてしまうことになってしまいます。

① 何が倫理的ジレンマかという“倫理的気づき”をすること。倫理的思考をする、まず第一歩は、倫理的ジレンマに気づくことです。

② 同じような事例でも、それぞれのケースによって解決策は異なります。たった一つの正解があるわけではありませんので、一つの解答を出すのではなく、みなさま自身が、今後、自分の実践の現場で、チームで考えるために必要な倫理的ツール(根拠)を提供したいと思っています。

③ そのためには、直感も必要なことがありますが、しっかり立ち止まって考えるためには、経験と直感だけではなく、ある程度の倫理的・医学的・法的知識が必要となることもあります。

もし、みなさまが現場の倫理的ジレンマの解決策に悩み、答えが見つからない場合でも、ⅰ)それが倫理的問題であるという「気づき」がなく立ち往生している場合と、ⅱ)それが倫理的問題であるという「気づき」をして、その人のために皆で考えてみようというプロセスをとった場合とでは、「倫理的意味合い」が異なるのです。

高齢者介護では、「かつてのその人」との「連続性」に気づく

高齢者介護の現場では、「今日が何日かわからない」「失禁をする」「自分がどこにいるのかわからない」といった人々をしばしば見かけます。しかし、今、いろいろのことができなくても、いろいろのことがわからなくても、この人たちは、かつては「一家のすべてを切り盛りするしっかり者の主婦だった」「元は学校の教師だった」「会社の経営者だった」など、社会において重要な位置を占めていた人たちなのです。

しかし、残念ながら、ケアスタッフは、いろいろのことができない、いろいろのことがわからない状態になったこれらの人と初対面することが多いのです。今、あなたの目の前にいる高齢者の方は、いろいろできないことが多いかもしれませんが、ぜひ、「かつてのその人」を思い描き、以前との連続性を忘れずに、その人を敬意を表する対象として見てください。

自分のことが自分でできなくなっても、自分のことを自分で決められなくなっても、「かつてのその人」がまわりの人々に対して果たした役割に敬意を示し、「現在のその人」にとって何が最も幸せなのかを考えることが重要です。

「共にある」という共感の姿勢が大切

医療においては、「何か(医療行為)をするdoing」「何かをしない」という発想になりがちですが、高齢者介護においては、「生活」の視点をもって、本人が「快と感じる生活」を送ることができるように、「共にあるbeing with」という共感をもった寄り添いの姿勢が大切です。

まさに、介護の現場には倫理的問題があふれています! 倫理的ジレンマに気づくことが、倫理的ケアを実践する第一歩です。「倫理」は、高齢者ケアの重要かつ本質的な要素なのです。「倫理的気づき」が、みなさまの思いやりと共感にあふれたケアの実践につながることを期待しています。


日本臨床倫理学会 「介護倫理」に関するワーキンググループ
委員長 箕岡 真子

目次

1 「尊厳」に配慮したケアとは

普段何気なく使う言葉「尊厳」について

じっくり考えてみましょう        箕岡 真子

2 コミュニケーションの大切さに気づく

入所者を理解し、共感を示すには、

コミュニケーションが最も重要です       箕岡 真子

3 意思決定能力について学ぶ

認知症の人に、自分のことを自分で決めさせていいの? 箕岡 真子

4 倫理4原則について学ぶ

倫理原則は、倫理的に正しい行為をしたり、

判断をするための“道しるべ”です       箕岡 真子

5 認知症の告知

アルツハイマー病は、告知しないほうがいいのですか?  箕岡 真子

認知症の告知にかかわる倫理的問題

6 がん合併認知症

認知症の人が、がんを合併しました      箕岡 真子

病名告知とインフォームドコンセント

7 「義務論」と「功利主義」の対立

「ここでは、冷蔵庫の中の物が盗まれるの」     箕岡 真子

嘘をつくことやごまかすことは、仕方がないのですか?

8 身体拘束

「私は椅子に縛りつけられることが、本当に嫌なのだ」  箕岡 真子

身体拘束にかかわる倫理的ジレンマ(行動コントロールの倫理)

9 BPSDと向精神薬

BPSDに対して、向精神薬を使用することは

適切なのでしょうか          箕岡 真子

本人のQOLに焦点を当てて適応を考える

10 個別対応と全体ケアの両立

「その訴えはいつものことだ…」       城島 義隆

繰り返される訴えと、取り合えない現実

11 「自律尊重」と「無危害」の対立

「まるで牢屋みたいだよ…」        木下 健

ドア開閉を困難化し、行動制限することの是非

12 夕暮れ症候群

「オラ、いくつも役をもっているから

家に帰らないといけない」         栗脇 亮二

入所者の価値観よりも、介護者の価値観を優先することの倫理的ジレンマ

13 療養場所の決定

「俺は施設になんか入りたくない!」      可知 郁枝

本人の意向に沿わない療養場所を、本人に内緒で決めていいのか

14 感染予防対策

「その手袋は、本当に清潔なの?」       北澤 綾乃

日常的なケアの中で見過ごされがちな感染リスクと倫理的課題

15 見守りカメラ

「プライバシーよりも命を守ってほしい!」     景山 朋子

不審者防止のために設置した見守りカメラの倫理的課題

16 呼称と倫理観

入所者を“ちゃん”付けやあだ名で呼んでもいいの?  景山 朋子

認知症や知的障害がある人への呼称

17 家族からの苦情

大きな声で職員を叱責する家族の面会制限     景山 朋子

家族からの苦情をカスタマーハラスメントとして片づけていいのか

18 BPSDと昼夜逆転現象

「昼夜逆転して、夜中に他人の引き出しを開けるのです」 箕岡 真子

BPSD行動障害にかかわる倫理的ジレンマ

19 悪い知らせを伝える

妻の死を、認知症の夫や他の入所者に知らせるのか   箕岡 真子

入所者の死を告げる際の倫理的配慮

20 がん末期の在宅ケア

「 最期まで介護サービスは受けたくない!」     倉井 千恵

人生の最期のステージをサポートする

21 男女の交流

「 私はこの男性とダンスを踊りたいのよ」     倉井 千恵

デイサービスでの男女の交流をとめるべきか?

22 人工的水分栄養補給と身体拘束

経口摂取不能と判断され、

介護への抵抗のため継続された身体拘束     金沢 英哲

医療現場で漫然と継続された身体拘束

23 胃ろうの閉鎖

胃ろうの穴は“開けっぱなし”でいいの?     金沢 英哲

摂食嚥下障害の倫理

24 看取り

「そろそろお迎えが来るかもしれない…」     箕岡 真子

今、本当に“看取り”に入っていいの? 医学的事項を検討することの重要性

25 看取り

「身体中にチューブはまっぴらだ!」      箕岡 真子

本人の意思を尊重すること(事前指示/ACP)の重要性

26 看取り

本人の意向がわからないときは、

どうすればいいのですか?        箕岡 真子

家族による適切な代理判断のプロセスを考える

27 看取り

「夫にこれ以上、治療はしないでください!」    箕岡 真子

家族は代理判断者(キーパーソン)として適切か?

28 転倒事故

転倒事故で訴えられてしまいました      稲葉 一人

どのような場合に責任が問われるのかを法的視点から考える

29 虐待と通報義務

「虐待かもしれません! 通報しなくていいの?」   稲葉 一人

高齢者虐待と守秘義務の解除(通報義務)について法的視点から考える

30 個人情報保護

「 レクリエーションで撮った写真を、

パンフレットに載せてもいい?」       稲葉 一人

個人情報保護が問題となる事例と、知っておくべき個人情報保護のルール

31 成年後見制度

認知症になってしまったら、

介護保険契約や施設入所契約はどうしたらいいですか? 稲葉 一人

成年後見人制度に関する最低限知っておくべき法的知識

32 介護倫理のエッセンスと法

「法」は「倫理」の最低限である        稲葉 一人

おわりに              木下 健

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書籍情報

  • ISBN:9784867191392
  • ページ数:160頁
  • 書籍発行日:2026年9月
  • 電子版発売日:2026年10月7日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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