- m3.com 電子書籍
- 実験医学増刊 Vol.44 No.15 がんの自然史
商品情報
内容
がんの始まりは時に幼少期まで遡り,数十年の長い時間をかけて臨床的な「がん」に至ります.本増刊号ではドライバー変異に加え,エピゲノム,さらに炎症,免疫,代謝,微生物叢,老化,組織微小環境といった選択圧によって「いつ」「どのように」がんらしく進化していくのかに迫ります.予防・超早期介入の可能性,あるいは治療抵抗性や再発といったがんの本質的克服に向けた新たな戦略へとつながりうる一冊です.
序文
序
がんは長らく,遺伝子異常が蓄積した結果として発症する疾患と考えられてきた.実際,がんゲノム研究の飛躍的な発展により,多くのドライバー遺伝子や分子標的が同定され,診断や治療は大きく進歩した.しかし,これまでの研究の多くは,すでに成立した「がん」を対象としてきた.一方で,がんはいつ,どこで生まれ,どのような過程を経て臨床的ながんへ至るのか,さらには治療によってどのように姿を変え続けるのかという「がんの自然史」については,いまなお十分に理解されているとは言い難い.
この状況は近年,大きく変わりつつある.次世代シークエンス,シングルセル解析,空間オミクス,質量分析イメージングなどの革新的技術の発展により,一見正常にみえる組織にも膨大な体細胞変異が蓄積し,多様なクローンが組織内で競合・進化していることが明らかになった.さらに,炎症,免疫,代謝,微生物叢,老化,組織微小環境といった宿主側の要因が,この進化過程に強い選択圧を与え,発がんや治療抵抗性を規定することも次々と示されている.すなわち,がんは単なる遺伝子異常の集積により起こる疾患ではなく,宿主との相互作用のなかで長い年月をかけて進化する生命現象として理解される時代を迎えている.
こうした「がんの自然史」を理解することは,発がん機構の解明にとどまらない.がんが臨床的に出現するより前の変化を捉え,発症を予測し,さらには発症そのものを防ぐ新たな医療へとつながる可能性を秘めている.また,治療中に生じるクローン進化や腫瘍内多様性を理解することは,薬剤耐性や再発を克服するための新たな戦略の基盤ともなる.
近年,この分野では,正常組織の体細胞進化,クローン性造血,微生物叢,細胞老化,代謝,オルガノイド,シングルセル解析,空間オミクス,治療抵抗性など,多様な研究領域が急速に発展してきた.本書では,それぞれの領域を専門とする研究者が,「がんの自然史」という共通の視点から最新の知見を概説している.
本書は,正常組織から前がん病変,発がん,腫瘍進化,選して治療による適応進化までを一つの連続した生命現象として捉え直すことを目的として企画した.個々の研究領域はこれまで独立して発展してきたが,それらを時間軸と進化という共通の視点から俯瞰することで,個々の知見のつながりがより明確となり,がんという生命現象の全体像が見えてくる.
本書が,基礎・臨床を問わず多くの読者にとって,がんを「できあがった病気」ではなく「進化し続ける生命現象」として捉え直す契機となり,新たな研究や診療,さらには予防・超早期介入へ向けた発想につながれば幸いである.
2026年7月
京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座
小川誠司
目次
概論 がんの自然史を俯瞰する【垣内伸之】
第1章 体細胞モザイクと発がん
1. 食道上皮における体細胞モザイクとがん化【横山顕礼】
2. 正常腎ネフロンにおける体細胞変異【家入康輔】
3. 末期腎不全における腎臓がんの発がん機構【田中庸介】
4. 肺における体細胞モザイクとクローン進化【吉田健一】
5. 乳腺におけるドライバー変異蓄積とクローン進化【西村友美】
6. クローン性造血の全体像―発生メカニズムと健康上インパクトの観点から【佐伯龍之介】
第2章 がんの進化とエピゲノム
1. エピジェネティックリプログラミングによる細胞可塑性の変化と発がん【末松万宙,三小田 直,山田泰広】
2. EBウイルスがもたらすエピゲノム再構築と胃がん進展【金田篤志,岡部篤史,松坂恵介】
3. エピゲノム異常に基づく骨髄系腫瘍のマウスモデル解析【岩間厚志】
4. エピゲノムからみた急性骨髄性白血病の多様性【越智陽太郎】
第3章 がん進化のモデリング
1. オルガノイドを用いた発がん過程のモデリング【岸本翔太郎,アンドレアス マイケル シホンビング,佐藤俊朗】
2. 大腸がん進化のモデリング―大腸前がん病変から進行がんへの過程におけるゲノム進化と免疫逃避【三森功士】
第4章 がんの進化とエコシステム
Ⅰ.環境因子(変異原)と発がん
1. 変異シグネチャーから読み解く環境発がん―DNA損傷からヒト腫瘍ゲノムへ【戸塚ゆ加里】
2. 腸内細菌由来コリバクチンによるDNA損傷と大腸発がん【柴田龍弘】
3. 胃がんにおける生殖細胞系列病的バリアントとピロリ菌感染【碓井喜明,松尾恵太郎,桃沢幸秀】
Ⅱ.組織微小環境の変容
4. 微生物叢と細胞老化が制御するがんの進化【新庄記子,原 英二】
5. 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)関連肝がんの組織微小環境における選択圧と発がん機構【大谷直子】
6. エクソソームの多様性が形づくるがん微小環境【金 里阿,丸尾匡史,星野歩子】
Ⅲ.腫瘍免疫とがん進化
7. がん免疫編集とクローン進化【谷口智憲,茶本健司】
8. ミトコンドリア伝播を介したT細胞制御によるがんの進化【渡部智文,冨樫庸介】
9. 腸内細菌による樹状細胞を介したがん免疫応答の活性化【林 怡孜,小山正平】
第5章 がんの進化と多様性
1. 造血幹細胞の不均一性によるクローン進化と病態多様性【吉里哲一】
2. 脳腫瘍の多様性:起源細胞と遺伝子異常から解明されるクローン進化【鈴木啓道】
3. オミクス計測技術が明らかにする肺がんの多様性【芳賀泰彦,何 東宸,大塚佳輝,鈴木絢子】
第6章 治療によるがんの進化
1. 薬剤耐性から迫るKRASの発がんとスプライシング【小林祥久】
2. 膵がんのオートファジーによる代謝適応,免疫回避,および治療抵抗性:KRAS阻害剤時代の展望【山本恵介】
3. バイパスシグナルが惹起する肺がんの分子標的薬耐性【矢野聖二】
4. 化学療法とクローン性造血【高橋康一】
便利機能
- 対応
- 一部対応
- 未対応
- 全文・
串刺検索 - 目次・
索引リンク - PCブラウザ閲覧
- メモ・付箋
- PubMed
リンク - 動画再生
- 音声再生
- 今日の治療薬リンク
- イヤーノートリンク
- 南山堂医学
大辞典
リンク
- 対応
- 一部対応
- 未対応
対応機種
iOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:10.2MB以上(インストール時:24.1MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:40.7MB以上
AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:10.2MB以上(インストール時:24.1MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:40.7MB以上
- コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
- コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
- Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
- Androidロゴは Google LLC の商標です。
書籍情報
- ISBN:9784758129732
- ページ数:202頁
- 書籍発行日:2026年9月
- 電子版発売日:2026年9月10日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
お客様の声
まだ投稿されていません
特記事項
※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。
※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍アプリが必要です。
※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。


