Dr. 下田の論文執筆無双　ストーリーで紡ぐ新たな執筆術

序

論文とはなんだろう，と考えることがあります．以前は，格式が高く，選りすぐられた精鋭のみが執筆を許され，その中でも天才といわれる一握りの才能たちが無双する世界だと思っていました．そんなところに飛び込んでゆくなんて，普段，難易度イージー（歴史を追う者）だったのに，急にベリーハード（無双に挑む者）でプレイするようなものです．怖くて手出しなんかできません．しかし，やってみると案外なんとかなるもので，最初はキツイ場面もありますが，クリアを重ねてゆくことで自分のスキルも上がってゆき，楽しんでプレイできるようになります．2025年9月現在，私の筆頭著者の論文は44本を数えるようになりました．それによって自分は何を得たのか，世界は何か変わったのか──正直なところ，自分でもよくわかっていません．ただ，論文を書くことは，実はそれほど高い敷居ではなく，誰にでもできるということを証明できたのではないかと思っています．なにも特別なことをしているわけではありません．私の場合，指導してくれる先生がいて，興味がある研究をさせていただける環境があって……ただ運が良かっただけの話です．マジで才能なんかないですから！　謙遜とかじゃないですからね！

それでも，初期武器でいきなりベリーハードに挑むのはさすがに尻込みします．ですが，私に素晴らしい指導医と環境があったように，あなたにはこの「論文執筆無双」があります．本書は，私の経験と指導医から教えていただいた金言を盛り込み，すぐに実践投入できるように執筆いたしました．ぜひ本書を片手に，もう一方には“論文を書きたい”という心の矛を携え，エビデンスという戦場に駆け出しましょう．まだ見たこともない素晴らしい景色が（死線を越えた先に）待っています！　誰でも論文なんて書けますからね．いえ，書けるようにしてみせます！　本書を読んで，あなたも論文執筆無双しましょう！最後に，論文を書けるよう指導してくださった杏林大学医学部付属病院呼吸器内科 石井晴之教授，皿谷 健教授，感染症科 倉井大輔教授（師匠），またいつも論文を見てくださっている結核予防会複十字病院呼吸器内科 田中良明先生，森本耕三先生，吉山 崇先生に深く感謝申し上げます．また本書の作成に尽力くださった株式会社中外医学社の中島 崚様，ならびに日頃からご指導いただいています複十字病院，杏林大学医学部付属病院の先生方，本当にありがとうございました．

2025年10月

結核予防会複十字病院呼吸器内科
下田真史