眼精疲労の予防がわかる 遠視診療のすべて

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2026年10月
  • 電子版発売日 : 2026年10月7日
¥7,700(税込)
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商品情報

内容

眼精疲労治療の基本は遠視矯正にあり!「遠視=完全矯正」では不十分!!

「視力は良いのに眼が疲れる」
「夕方になると頭痛がする」
「パソコン作業が続けられない」
「ドライアイ治療を続けても改善しない」
このような患者の訴えを、単なる眼精疲労や不定愁訴として終わらせていないでしょうか。

遠視は「遠くが見える眼」と理解されることが多く、裸眼視力が良好であるために、患者自身にも医療者にも問題として認識されにくい屈折異常です。しかし遠視眼では、遠方視においても明視を維持するために調節を必要とし、日常生活のなかで毛様体筋に慢性的な負荷がかかっています。
本書では、遠視を単なる屈折異常ではなく、「調節の慢性負荷」という視点から捉え直します。遠視眼でなぜ眼精疲労、頭痛、肩こり、集中力低下など多彩な症状が生じ得るのかを、遠点・虚空間・調節力という概念から整理し、臨床で患者を診るための新しい視点を提示します。

遠視診療で重要なのは、「どこまで見えるか」ではありません。「どのような負荷の上に、その視力が成り立っているのか」を評価することです。裸眼視力が1.5あっても、その視力が過剰な調節努力によって維持されているのであれば、患者は日常生活のなかで常に眼を酷使している可能性があります。
本書では、遠視を疑うための問診、症状から調節負荷を読み取る方法、屈折検査で遠視を見逃さないための具体的な手順を詳述します。自覚的屈折検査、両眼同時雲霧法による「快適矯正度数」の考え方など、一般外来で実践できる検査スキルを解説しています。
さらに、遠視矯正で多くの医師が悩む「眼鏡を掛けると気持ち悪い」「裸眼のほうが見える気がする」「眼鏡が続かない」といった患者対応についても、光学的背景から丁寧に解説しています。遠視眼鏡特有の像拡大、距離感の変化、枠外視による違和感などを理解することで、患者への説明と装用指導が可能になります。
また、眼鏡だけでは適応が難しい症例に対するコンタクトレンズの活用についても、眼鏡先行かコンタクトレンズ先行かという選択から、不等像視への対応、HCL・SCLの使い分け、眼鏡との併用まで実践的に解説しています。
小児から成人、中高年まで幅広い症例を提示している点も本書の特徴です。
裸眼視力は良好だが学習時の集中困難を認めた小児遠視、パソコン作業を契機に体調不良を呈した成人例、眼鏡が馴染まない高度遠視・不同視例、老視と考えられていた中高年遠視例など、日常診療で遭遇する患者像を通じて、遠視診療の考え方を具体的に学べます。

眼精疲労診療に携わる眼科医、視能訓練士に、新たな診療の視点を提供する1冊です。

序文

はじめに


本書は,遠視眼の矯正を単なる屈折異常への対応にとどめず,眼精疲労診療の中核として捉え直す試みである.

裸眼視力が良好であるがゆえに見過ごされやすく,患者にも医師にも理解されにくい遠視眼は,実は多くの慢性的な眼精疲労,頭痛,肩こりの背景に存在している.本書では,特別な検査機器をもたない一般外来においても,遠視眼を見抜き,快適な矯正へ導くための考え方と実践を,筆者自身の臨床経験をもとにまとめた.

筆者が眼科医になった頃,ちょうどパーソナルコンピュータ(パソコン)が急速に普及し始め,眼精疲労を訴えて受診する患者が増えていた.パソコン使用者に特有の訴えが多かったことから,こうした状態はやがてVDT(visual display terminal)症候群と呼ばれるようになった.強い疲労感を訴えるにもかかわらず,当時の検査方法では特徴的な他覚所見は得られず,診療には時間を要する一方で成果が見えにくい.眼科外来では,次第に敬遠されがちな患者群となっていた.

なぜか,そのような症例が筆者のもとに集まってきた.とはいえ,当時の筆者に特別な打つ手があったわけではなく,ただ話を聴き,相づちを打つことしかできなかったというのが正直なところである.

転機となったのは,遠近両用眼鏡を希望して来院した1人の患者との出会いであった.処方経験のなかった筆者は,先輩から教わった通りに処方箋を作成したが,後日「こんな眼鏡は使えない」と再来院された.理由がわからず,患者に待ってもらい,完成した眼鏡を持って眼鏡店へ向かった.病院から徒歩数分の距離にあったその店で,初めて累進屈折力レンズのテストレンズの存在を知り,外来に戻って実際に試してみたところ,患者が無理なく装用できる加入度数は+1.50 Dであった.筆者が処方していたのは加入度数+2.50 Dであり,その眼鏡はとても実用に耐えるものではなかったのである.

この経験を通して,遠用度数と加入度数を単純に記載するだけの処方箋が,累進屈折力レンズにおいては全く不十分であることを思い知らされた.テストレンズを用いるようになってから,遠近両用眼鏡の処方は一転して興味深いものとなった.

その後,累進屈折力レンズ眼鏡を処方した遠視の患者から,「この眼鏡をかけるようになってから肩こりが全くなくなった.眼鏡で肩こりが治ることがあるのですか」と尋ねられた.筆者は即答できなかったが,その言葉が強く心に残った.もしや自分自身の長年の肩こりも調節の慢性的な負荷が原因ではないかと思い,初めて自分の屈折状態を詳しく調べてみたのである.子どもの頃から視力が良かった筆者は,眼科医になってからも自分の眼を真剣に検査したことがなかった.測定の結果,両眼とも球面±0.00 D,円柱-0.75 Dの倒乱視であった.遠方視に不自由はなかったため,遠用度数は±0.00 Dとし,円柱補正は行わず,加入度数+0.75 Dの累進屈折力レンズ眼鏡を作製して装用してみたところ,中学生の頃から悩まされてきた頑固な肩こりが完全に消失した.この体験は,その後多くの眼精疲労患者を救う出発点となった.

裸眼視力が良好な患者に眼鏡装用を勧めることは,決して容易な診療ではない.しかし,一度でも適切な矯正を体験してもらえれば,眼精疲労から解放されることが多く,患者の喜びも大きい.その経験を重ねるうちに,筆者は「快適な矯正の基本は遠視眼の矯正にある」と考えるようになった.

強い眼精疲労を訴える患者の多くは遠視眼である.一方,適切に矯正された近視眼が眼精疲労を訴えることはほとんどない.近視眼で症状を訴える場合,その多くは過矯正や不適切な乱視矯正など,合わない眼鏡が原因である.遠視眼に対する快適な矯正の勘所を理解すれば,近視眼の矯正はそれよりもはるかに容易であることに気づく.良好な遠見視力を得るだけの矯正が,時として患者を苦しめることがあるという事実も,忘れてはならない.

遠視眼に対するコンタクトレンズの処方は,眼鏡処方よりも容易な場合が多い.遠視用コンタクトレンズは中心厚が大きく,近視用コンタクトレンズ以上に適切なフィッティングが求められるが,網膜像の拡大やプリズム効果が少なく,裸眼に近い視界を提供できるため,眼精疲労の軽減効果は眼鏡と同等,あるいはそれ以上である.筆者は「検査のために一度装用してみましょう」と声をかけ,自ら患者の眼にコンタクトレンズを装着し,一定時間経過後に見え方を確認することを常としてきた.その多くの患者から,「眼鏡よりも楽だ」という反応が得られた.

本書では,筆者が経験してきた多くの症例をもとに,遠視矯正の必要性,その難しさ,そして臨床としての面白さを余すところなく記した.特別な装置に頼らずとも,外来診療の中で遠視眼を見抜き,快適な矯正へ導くことは可能である.本書が,患者の眼と真摯に向き合う医療者に届き,眼精疲労や視機能の問題に悩む一人でも多くの患者の助けとなること,また,遠視診療が読者にとって新たな,そして楽しいライフワークとなることを心より願っている.


2026年10月

梶田雅義

目次

Chapter1 遠視の本質―屈折異常にとどまらない“調節の慢性負荷”である―

1.屈折異常の定義と「遠点・虚空間」という視点

2.正視・近視・遠視における調節状態の本質的な違い

3.裸眼遠見視力が成立するしくみ

4.調節が「常時ON」であるという病態

5.なぜ遠視による調節負荷は多彩な症状を引き起こすのか

Chapter2 遠視が関与しうる全身症状と社会的影響―集中力低下・自律神経症状・“原因不明”症候群―

1.集中力低下と学習・作業効率の低下

Case 01 裸眼視力は良好だが学習時の集中困難を認めた小児遠視眼[10歳/男児]

Case 02 デジタルデバイス作業時の眼痛・頭痛を契機に発見された遠視眼[30歳/男性]

2.自律神経症状と遠視

3.“原因不明”とされる患者に潜む遠視

4.遠視関与を見極める鑑別の視点

Chapter3 遠視を疑う力―初診時にここまでわかる―

1.問診で拾うべきキーワード

2.遠視を疑った際の基本問診

3.生活背景・作業距離・職業の重要性

4.裸眼視力が良い患者ほど注意すべき理由

5.遠視を疑う症状と鑑別疾患

6.見逃されやすい遠視の典型例

Case 03 裸眼視力良好のため見逃されていた中等度遠視眼[32歳/男性]

7.「見え方」ではなく「負荷」を診る

Chapter4 屈折検査の再考―遠視を見抜く検査とは何か―

1.他覚検査・自覚検査の限界と意味

2.両眼同時雲霧法と「快適矯正度数」

3.軽度遠視眼ほど症状が強い理由

4.「度数を出す」ことと「診断する」ことの違い

Chapter5 遠視矯正の原理―なぜ最初はつらいのか―

1.矯正初期に起こる不快感

2.短時間装用が逆効果になる理由

3.点眼薬を用いた初期適応の補助

4.終日装用が適応を早める理由

5.患者が訴える違和感の背景にある光学的特徴

Chapter6 遠視診療の実践―遠視眼をいかに疑い,検出し,矯正へ導くか―

1.遠視診療の基本戦略

2.時系列でみる遠視診療

3.装用指導の原則と注意点

4.眼鏡のフィッティングと累進屈折力レンズ

5.遠視診療で最も重要なこと

Chapter7 眼鏡かコンタクトレンズか―矯正手段の戦略的選択―

1.眼鏡先行か,コンタクトレンズ先行か

2.眼鏡矯正の利点と限界

3.コンタクトレンズ先行が有効な症例

4.コンタクトレンズ選択の考え方

5.「裸眼視力が落ちる」感覚の正体

6.眼鏡とコンタクトレンズを併用する理由

7.コンタクトレンズ処方時の安全管理

Chapter8 遠視診療のCase study

1.小児の遠視

Case 04 視力は良好なのに集中力が続かない小児遠視[11歳/男児]

2.成人の未矯正遠視

Case 05 外勤から内勤になってから不調を生じた遠視眼[35歳/男性]

3.強度遠視における不同視

Case 06 眼鏡が馴染まない遠視眼[39歳/男性]

4.中高年と遠視

Case 07 単焦点コンタクトレンズで快適な矯正が得られた中高年の遠視眼[44歳/女性]

5.職業別(デジタルデバイス作業・精密作業など)の遠視

Case 08 ルーペが合わない遠視眼[70歳/女性]

6.症例からみた遠視診療の共通点

Chapter9 調節機能解析装置が教えてくれたこと

1.調節機能解析装置の概要

2.調節機能解析装置で観察できた臨床所見

3.なぜ調節機能解析装置がなくても診療できるのか

4.調節機能解析装置は何を可視化したのか

Chapter10 眼科医・視能訓練士へのメッセージ

1.遠視診療で自信を失わないために

2.患者の反応に振り回されない

3.遠視を診られる医療者の価値

4.おわりに

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784895908924
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2026年10月
  • 電子版発売日:2026年10月7日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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